異邦ノ彼女

□5戦
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「元親、久しいな!」

そう言いながら空から降って来たのはオーバーテクノロジー甚だしい機械の甲冑に乗った、色々と黄色い少年だった。

……ねぇ、あのデカいのって所謂“中の人”っているの?
それとも考えるだけ無駄な類なの?

ちなみに最近の考えるだけ無駄な事項は『婆娑羅という力について』と『毛利の野郎が何でアタシに求婚してくるか』だったり。



「よお家康、どうしたんだよ先触れも無しに。おい、濯ぎ出してやってくれ」

「儂の用件を言う前に…元親、この地でも“魔物”は出ているのか?」

「魔物ってーと…藁束に手足が生えたような奴だとか、やたらデカい獣とかの事か?」

「こちらではそんな形(ナリ)をしているんだな。ともかく…おお、すまない」


続けようとした台詞は女中さんが水を張った桶を持って来た事で一旦途切れた。

部屋に案内される中、時々こっちを向く視線がくすぐったい。


謁見室とかじゃなく、特に何も無いただの空き室に入った元親はどっかりと座り込んだ。
その少し後ろにアタシが、元親の正面には…イエヤス?君が。


「所で…そこの御仁は?」

「ああ、財政を担当してる紫苑だ。今回の魔物騒動のご意見番つーか、まとめ係みてぇな事もしてもらってる」

「そうか。儂は徳川家康!三川を治める将だ!」

「紹介にあずかった紫苑と申します」


無愛想かな、と思いはしたけどここで愛想振り撒く意味も無さそうだったんで通常運転。
握手の習慣が無いここじゃ相手が頷いただけで挨拶が終わる。


「で、今回はどうしたんだ?わざわざ本田に乗って来たってこたぁ、それなりに急ぐ用事だろ?」

「ああ。元親、それに紫苑殿も。奥州に“天女”が舞い下りた、という噂を知ってるか?」

「天女だぁ?」

「そういえば、騒動の報告にそんな事があった気が…」

元親、あんたには各地別にまとめた報告書渡してあったと思うんだけど。

またサボって釣りに出てたの?
ひんやりしたアタシの視線に気付いたのか、ほんのちょっと元親の肩がビクついた。

やぁね、客人がいるんだし何もしないわよ。
…客人がいるうちは。


「天女に会ってから、奥州の独眼竜とその右目が天女に構い通しらしい。儂は慶次に聞いただけで見ておらんが、まるで人が変わったようだ…と」

「…独眼竜だけならまだ分からなくもねえ、が……あの堅物って噂の右目まで…?」

ふむ、と考え込む元親をアタシもイエヤス君も邪魔しない。

見てくれからして肉体派だし海賊衆名乗ってるし考えるより先に動くタイプだけど、元親は元々かなり頭がいい。
手本になる設計図や代物が無い状態であの木機他バカデカい絡繰を作れる程度には。

それはこの戦国の世界で逸脱とも言えるくらいに。


「…その天女がよっぽど別嬪なのか、あるいは妖魔の類か…」

「やはりそう思うか。慶次が言うには、頭の中を覗かれているような…自分が書き換えられていくような、奇妙で恐ろしい感覚だったと」

「で、お前ぇさんは俺に忠告しに来てくれたのか?」

「それもあるが、友に会いに来るのに特別な理由がいるか?」



あ、宴会フラグ。
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