異邦ノ彼女
□4戦
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ぷっかー……
「…んん?」
その日、アタシはドーブツを拾いました。
「助かりました…流石に死ぬかと思いましたよ…」
銀の毛並みの、血色の悪い
「なのであまり強く締めなあぐっ」
血塗れで笑う変態という名の生き物を。
…手当て中に締め落としちゃったんだけど大丈夫だよね?
*****
この世界に来てそこそこ経ったし、ある程度の文化や風習なんかも理解はしてる。
けど納得は出来ない事が色々と…領土争い(天下争い?)するのはともかく、農村焼き討ちとか何なの。
いや人死に出るし戦争そのものが良い事ではないって分かってはいるんだけどね。
荒事中心の生活が長いせいでその辺がどうにも曖昧というか…
ともかく、アタシは無用な争い事を生まない為にも拾ったドーブツを山の中にある洞窟に匿う事にした。
「おや紫苑さん、今日は早いですね」
「お腹空かせたペットが待ってると思いまして」
「…ありがとうございます」
光秀、と名乗った彼は明言する事は無かったけれど別の土地の武将なんだろう。
病的に細い体躯とは裏腹に、付いた筋肉の形は元親と形こそ違うけれど“実践用”と一目で分かる。
…まあ、アタシと光秀の関係性と言えば拾って拾われた、言わば飼い主とペットに近いんだけど。
「まさか崖から落ちた挙句に海を漂流するとは思いませんでした」
「普通そんな事になったら衰弱死するんだけど」
「ギリギリの生命線はそこらの生き物を喰らって保っていましたから」
曰く彼は闇属性で、闇属性の者は個人差はあれど他者の生命力を奪い取る事が出来るらしい。
何ソレ怖い。
後その能力の個人差って、吸い取る側なのか取られる側なのか。怖くて聞けないけど。
「何度も言うけど、動けるようになったらさっさと出て行ってよね」
「酷いですねえ…まあ拒否する理由もありませんので従いますが」
「しっかし…妙よねえ、君」
手近な岩に腰掛けてスープ(お裾分けやら採集やらで入手した野菜とか山菜とか木の実のごった煮)とそこの川で釣った魚の丸焼きをかじる男を見やる。
着ている物は薄汚れていたり所々破れたりしてるけど、どう見ても一般庶民に手が届くような代物には見えない。
…彼自身はアタシが気づかないと思っているのか、それとも気づかれようとどうでもいいのか。
服だけじゃなく、立ち振る舞いや言葉の端々からも教養の高さは見てとれる。
なのに彼は躊躇いなく砂利の地面に座り込み、適当もいい所のごった煮を半ば素手でかき込み、串に刺しただけの魚の丸焼きにかぶりつく。
――野性味のある教養人、だと何だか違和感だし。
「不思議ですか?私が」
「そーね。差支えなければ答えてほしいくらいには」
アタシの言葉に光秀はそーですねぇ、と呟いて宙を仰ぐ。
元親のとはまた違った輝きを放つ白銀の髪は、今は泥やら何やらで薄汚れてしまっていた。
「前世…といったものを信じますか?」
「…まあ(一応)転生してるようなもんだから信じるけど」
「ククク、ええそうです信じられないでしょうけ………え?」
「いやだから、信じるって」
きょとん、と目を瞬かせる彼は見た目に反して、何だか酷く頼りなさげな…迷って途方にくれる子供のような気がした。
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