異邦ノ彼女

□2戦
1ページ/7ページ

side:シオン

派手に勘違いしていた元親に鉄拳を喰らわせ(主君?気にすんな)、彼がそこから回復してしばし。

見せられたこちらの文字に目が点になった。


「…ミミズがのたくってるようにしか見えない」


ついでに地図らしいけどこれは何。

島?地形は?規模どれくらいなの?縮尺は?

全部不明とか言われたふざけんな。


「うわ〜…文化から風土から何もかも全てが違うんじゃないの、これ」

「そんなに変わるのか?」

「まーね…はぁ、しばらくはこっちに慣れるのに集中しなきゃ」


まずは着替えくらい自分で出来るようになりたいなー…と、心中で呟くアタシは着替え中。
見た目が若かろうと中身は多分3桁、恥ずかしすぎる。

しかもやってくれてるのがどう見ても十代の子なのがまた。


「シオン様は背が高くていらっしゃいますから、濃い色がお似合いかしら?」

「よく分からないけど…あんまり明るいのはちょっと、ねぇ」

「ふふふ、確かに桃色よりも緋色の方がお似合いですわ」


ぎゅ、と帯を締めて完了。
大分ギッチリ締めてる気がするんだけどこれ…


『いかがでしょう?』と言われ見せられた姿見には、鮮やかな赤系の生地に明るいピンクやオレンジで何かの花が刺繍されたキモノと、更に濃い赤から黒に近い色へとグラデーションが施されたオビを締めたアタシが映っていた。

髪は毛先から手の平1つ分くらい上の方で遊ばない程度に緩く結ばれている。


「…動きづらい」

「慣れて下さいませ。女子とはかくあるべきものにございます」


…ちょっと引っ掛かる言葉があったけど、今は突っ込むのはやめておこう。

「まあそこは妥協するわ。所で貴女の名前を聞いていいかしら?」

「僭越ながらシオン様の身の回りのお世話をさせていただきます、鈴と申します。
時にシオン様、着付けが終わり次第連れてくるように、と元親様から仰せつかっております」

「了解、行きましょうか」



そうやって案内されながらそれとなく視線を巡らせる。
全木造、見える範囲に釘なんかは見えない。それでいて外観はシンプルかつ美しく。

その建築技術に思わず嘆息してしまった。


「何かお気になりましたか?」

「いいえ。ただ、ここの建築技術は素晴らしいと思って。木だけで作るのもそうだけど、見栄えも考えて作られてるのがいい」

「ふふ、シオン様は殿方のような物の見方をするのですね」


また引っ掛かる。何だこの感じ。

悶々と悩んでいるうちに着いたのか鈴の声で現実に引き戻された。
作法なんて分からないから普通に立ってたら、勢いよく扉が滑って行った。


…横スライドなのか。


「お、おお…見違えたな、とりあえず入ってくれ。茶と茶菓子頼む」

「承りました」


先に入っていく元親を追って歩きにくい足下に眉を寄せていると、それに気づいたのか苦笑された。
何で鈴はこんな不自由な服着てあんなにスタスタ歩けるんだろう。

慣れか。






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ