零崎月織の人間遊戯

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最近、きな臭い。
はっきりした事は分からないけど、何と言うか…

争奪戦だとかで慌ただしいのもある、ちょっと前に起きた事件(銀髪で義手の男だとか)のせいもある。
でもそれ以上に、私の意識に引っ掛かるかどうかの引き際で事が起きているような――


「うーん…友から何も無いって事は、少なくともオンライン上じゃ異常なしって事だよねぇ…」

いやでも、シン曰くあいつは私と同じようにイレギュラー補正があるって言うし。

私のは多分“戯言キャラとのエンカウント率”とかそんなんだと思うけど、あいつの補正がどこにかかっているのか。
容姿とか出生とかも弄ったらしいし、考えるだけアホくさいか。

多分“不干渉”なんだろうけど、シンに聞いても『それ教えるのはルール違反だろ』って。
最初から駄目元です。


「ま、取れる手段は取るけどねー」

携帯を操作してとある番号を呼び出す。
通話ボタンを押せば久しぶりに聞く“兄”の声。

マシンガン並に繰り出される心配の声を何とか宥めて、簡潔にまとめた用件を伝えると彼は「うふふ」と笑った。

「うん…うん、やり方はそっちに任せるよ。日付は後々知らせる。……ああ、それもいいかもね。―――じゃあ、よろしく。双兄」


通話を一旦終了させ、今度はまた別の番号へ。2コールで出てくれた。

いっそ事務的な程簡潔な彼女にも説明し、協力を取り付ける。
ほとんど二つ返事だったけどそれでいいの?と聞いたら「貴女を疑うだけ無駄ですから」って。

…信頼されてる、って事でいいんだよね?
単純って意味じゃないよね?


通話終了を知らせる画面を見てゆるりと口端を上げた。


「少しずつ絡め取ってあげるよ…覚悟しておいてね、姫屋真貴」

子荻ちゃんとこっちの顔合わせ(前話での来訪時)も済んだし、“実行部隊”の準備も着々と進んでいる。

薄暗い部屋に私の押し殺した笑い声だけが響く中、部屋の扉が細く開いた。


「また何か企み事ですか?」

「ああ、骸。やだなぁ、企みだなんて。仕事のついでにね、パーッと」

「パーッと?」

「祭ってやろうかと」

祭る、はもちろん普通のお祭りなんかじゃない。
血祭り、要は皆殺しとか虐殺とかそんな意味合いだ。

骸は笑みを絶やさず、むしろ恍惚とした表情で告げる。


「クフフ…僕は貴女に仕える一介の下賤な奴隷。貴女の命令ならば何なりと応えましょう」

「それもいいけど…何か用事があったんじゃないの?」

「ああそうでした。夕飯の支度が出来ましたよ」


椅子に座る私の足下に跪きながら、骸はひどく優しい笑みを湛えて言う。

私が指で骸の唇を辿れば、先を期待しているのかうっすらと頬に赤みがさした。

…敢えて言おう、エロいと。


「…じゃあ夕飯が終わったら、クロームに稽古つけなきゃね」

「っぁ…」

指を離した瞬間、骸から上がった声に一層笑みを深くした。
まだ跪いている彼の頬から頭部へと手を這わせ、オッドアイを見据えながら言う。


彼にとっては甘い甘い、蜜のように絡み付いて離れない毒のような言葉を。
――何て、ね。


「お楽しみは後にとっておくものでしょ?心配しなくてもちゃんとあげるよ」

それに頷くのは一介の下賤な奴隷。

―――破綻しかけている物語ならば、いっそ清々しいまでに狂わせて。


壊れてるなんて、誰にも言わせない。





――――
別段、えっちぃ事を期待してる訳じゃありませんよ骸さん。
ただ愛でられたいだけです。
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