零崎月織の人間遊戯
□8
1ページ/10ページ
「おい聞いたか?愛川が真貴を襲ったって」
「でも未遂っしょ」
「未遂だろーとガチだろーと、噂になってんのは確かだって」
「つーか愛川、無理やり襲うほど飢えてる風には見えねぇんだけど」
「年上辺りホイホイしてそうじゃね?」
何かどっかで聞いた事のある会話に、これまた聞き覚えのある下卑た笑いが上がる。
あの騒動の広まりは予想以上に早かったけど、予想に反して私の擁護派(むしろ傍観派?)が多かった。
こうして噂として騒ぐ程度はするけど、あからさまな嫌がらせも陰口も視線も無い。
むしろ下世話な話を振られる事が増えた。解せぬ。
「んでさ、愛川クンよ本当の所どうなんだよ」
「何が」
「お前の好み!オレらの見解は満場一致で年上のお姉さんだが」
あ、もちろんボインな!なんて付け足すクラスメイトの男子にデコピンをかましたくなった。
いや、女性を馬鹿にするなって思いも当然あるんだけどさ。
「年齢は…まあ、あんまり気にしないかな。離れすぎてなければ上でも下でも、って感じ。タイプは……んー、一緒にいて気楽というか、無理しなくてもいい人。体型もあんま気にしないかも」
「お、おお…予想以上に普通に返ってきて逆にびっくりだ…」
『タイプ云々ってかなり本音だろ』
まあ、ね。つーか嘘言うよりこっちの方がいいじゃん。
ああでも男性向けエロゲの巨乳インフレは気持ち悪いと思う。手から零れそうなくらいはさ、現実でも無くもないからまだ良しとして。上半身がほぼ埋まるくらいとか、乳首が自分の口に届くくらいとか、ああいうのは本気でキモい。
流石に目の前の彼らは中学生だしそんなの知らないとは思うけど。
「じゃあさ、真貴h」
全てを言い終わらない内にその男子は青ざめて口を閉じた。
周りは何が起きたのかよく分からずキョロキョロしてる。
……ふふ、誰が言わせるもんか。ピンポイントで殺気浴びせて黙らせてやる。
あのゴミをどう思うか?今すぐにでもグチャグチャの本物の生ゴミにしたいくらい嫌いですけど何か?
タイミング良く来た教師がHRを告げた事で男子達はそれぞれの席へと戻っていった。
そこでふと、隣の席が未だ空のままな事に気付く。
「―――で、笹川は体調不良で休みとの事だ」
……体調不良、ね。
沢田だけがターゲットかとばかり思っていたけれど、あの我儘姫(笑)は随分と欲張りらしい。
そう言えば最初の被害者は笹川京子だったっけね。
『忘れるなよおい…一応も何も、本来の物語のヒロインだぞ?』
元からリボーンって漫画そこまで好きじゃないし、守られてるだけの王道ヒロインもそんなに好きじゃないんだよね。
やっぱりさ、相思相愛なら…
「隣に立っていたいもんじゃん?」
潤と曲兄みたいに、さ。
あの2人さっさとくっつかないかな。
『本音漏れてる』
・