零崎月織の人間遊戯
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side:瑠奈
翌日の体育の授業。
女子が歓声を上げていた。
……訂正。私以外の女子の大半が歓声を上げていた。
「月識くーん!」
「山本くんこっち向いてー!」
「やーん格好いいー!」
「あっこっち向いた!」
「ツーショットとかマジ最高!!」
一部の腐った発言を除き、とても青春な感じですね。
……私ってそんなに男顔かな…密かにショック。
ちくしょう潤め、と思ってもしょうがない。
『元々が中性的だからな、お前』
うん、変装が上手くいっている、って前向きに考えよう!
『無理やりポジティブ……』
サッカーが終わり(女子はバレー。だが大半は男子の応援)校舎に戻ろうとすると、沢田がまたいびられていた。
見て、ちょっと迷った挙句……放置した。
別に自分はいい子じゃないし。
そして時間は流れ、昼休み。もはや常連になった沢田綱吉、獄寺隼人、山本武、そして姫屋真貴との昼食。
隣の姫屋がウザい。ウザ過ぎる。
双兄の方がまだマシな気がしてきたよ。
―――あ、でも。
これって、傍から見ると男子4人に女子1人の逆ハーレムなんじゃない?
ぢるる、と野菜ジュースを飲みつつ。実際は男女比3:2なんだけど。
「そーいやさ、月識って一人暮らしなのか?」
「ん、一応は」
頷いたはいいけど、眠い……さすがに睡眠時間3時間は無謀だったかなぁ…
午前の授業、体育以外全部寝てたんだけど。
「あ、じゃあ放課後すぐ帰っちゃうのも…」
「まあ、買い出しに行ったり家事したり、色々と」
主に仕事だけどね!
後あんたがウザいから逃げるため。
「あれ、じゃあ親とかはどうしてんだ?」
「あー……そこんとこは色々複雑だから、勘弁」
嘘じゃない。複雑過ぎるでしょ、家賊の事は。親はいないけどね。
家庭環境が幾分特殊なこいつらはそれだけで黙ってくれた。
……本来の“原作”ではそんなに突っ込んでないけど、父親単身赴任のほぼ母子家庭な主人公、母親不明の父子家庭、色々と謎な家出少年…と、彼らも普通とはちょっと言い難い。
あは、私が“普通”とか戯言でしょ。
「じゃぁさぁ、月識の他の家族はどこにいるのぉ?」
ウザいよこの人、この喋り方どうにかしてくんないかな。何で一々語尾伸ばすの。可愛いつもりなら敢えて言おう、キモい。
「んーと、兄弟ならほとんど京都にいるかな。兄の一人は北海道だけど」
「へー!月識って兄弟いんのか」
「いるよー。兄貴が4人と姉が1人。俺が末っ子」
「多いな…」
……さっきから沢田が一言も喋ってない。
しかもその事について誰も言わない。あの忠犬キャラな獄寺でさえ。
おかしいと考える暇もなく姫屋が口を開く。だからうぜぇ。
「一番上のお兄さんとかは、もぅ成人してそうだねぇ」
「いや、一番上どころか兄貴達はほとんどしてる。下の兄貴と姉貴だけギリギリ」
肝心な所(殺人鬼だとか)を避ければ、家賊ほど話しやすい話題は無い。オーソドックスな話題だしね。
『沢田綱吉、愛川月識、今すぐ応接室』
ブツッ。
単語が少なすぎる放送に唖然としていると綱吉が立ち上がった。
よく見れば、他の3人の顔が明らかに泳いでいる。
―――約1名はわざと泳がせている。
「月識くん、早く行こう」
「え、ああ」
名を呼ばれて、とりあえずここは従う事にした。
…応接室………って、確か風紀委員長の根城じゃ…
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