零崎月織の人間遊戯
□閑話
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「よぉ、俺の娘の妹」
「……は?」
彼と出会ったのは“こっち”に来てまだそれほど経っていなかった頃。
潤に急な仕事が入って、私は一人で留守番する事になり、まぁ休日だしいいか、と街をぷらぷらしていた。
コンビニで買ったアイスを食べながら公園で休んでいたら声をかけられ上に戻る。
「…誰ですか」
いや、言い回しで分かったけど。
ここが戯言世界である以上、こんな独特な言い回しをするのは彼だけだろう。1人いれば十分だ。
でもまぁ、初対面な訳だし、私の返事は妥当と思うのですよ。
「『誰ですか』か、ふん。確かに俺とお前が出会ったのは初めてだ」
う、わー。知ってたけど、この言い方って実際にされると滅茶苦茶ムカつく。
そして狐のお面も本物だ。わー、リアル。
……現実逃避ですごめんなさい。
「まあ初対面らしく自己紹介でもしてみようか。俺は《人類最悪の遊び人》だ、まぁ狐さんとでも呼べ。お前の名前は何だ、俺の娘の妹」
「瑠奈」
「『瑠奈』か、ふん。……瑠奈、お前ヒマか?」
「やるべき事やりたい事が無い状態をヒマと定義するならヒマですよ」
わざと可愛らしさ、子供らしさ皆無に言ってやったら、何がおかしかったのか彼…狐さんはくつくつ笑った。
場違いだとは分かってるけどさ。
この人、案外渋くていい感じなんだよね。
おっさん萌えは無いけど。
(見た目10歳でも中身は16歳の腐女子です)
「くくっ、予想以上に面白い奴だな、俺の娘の妹」
名前教えたんだからそう呼ぶなよ。
そう思って睨みつけてみるが、狐さんは気付いた素振りも見せない。
………まぁ、ラスボスだもんね。この人。
「瑠奈、お前俺の仲間にならないか?」
「このロリコン」
一言で切り捨てて、食べ終わったアイスのゴミをゴミ箱に放って、彼に振り向く。
「仲間にはなりませんが、半日デートなら付き合いますよ、狐さん」
「『半日デートなら』か、ふん。いいだろう」
そして私達は、お昼時なのもあったので近くに食べに行った。
料亭の個室だった。金持ちだ、この人も。
これが、私と“最悪”の彼、狐さんとの出会い。
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