零崎月織の人間遊戯
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side:瑠奈
京都某所のとある病院にて。
「はろーはろー!姉妹揃ってお見舞いに来てやったんだぜ感謝しやがれムッツリすけべ」
「帰ってくれ」
開口一番冷たかった。
なんて、あんな事を言われたら誰でもああ言うか。
「ごめんねいーたん。半分くらいは冗談だと思うから許して?」
「半分くらいかよ!」
うん、私は今潤の気持ちがすっごく良く分かる。
この人弄るのとっても楽しい。
相変わらず無表情のままこちらを睨むいーたんを無視して横のパイプ椅子に腰かける。
「まま、正直な話。いーたんが入院したって聞いて純粋に心配して来たんだよ」
私への電話の後、潤はいーたんを拉致って澄百合へ行ったそうです。
……お腹にスタンガンとか、無茶するよね。
あんな無茶苦茶な話をすんなり信じる(いや流される?)いーたんもいーたんだけどさ。
「…そうだ。あのさ、瑠奈ちゃん」
「なに、いーたん」
「姫ちゃんが…あ、姫ちゃんっていうのは今回の依頼人だったんだけど。その子がさ、『ここで殺しちゃったら瑠奈ちゃんとの約束破っちゃいますね』って子荻ちゃんと玉藻ちゃんを殺さなかったんだ」
なんだ、ちゃんと約束守れたんだ。
その事に少し嬉しくなりつつ、首を傾げるいーたんに簡単な事情を説明する。
「姫と…っていうか、澄百合の一部の生徒と私は面識があるんだよ。何度か共同戦線……って言っていいのか微妙だけどそんなの張っててね」
面識があるって言っても3人だけですが。そこは秘密にしておく。
ちなみに双兄命名“小さな戦争”はしっかりばっちり起きて終わっていた。
…うん、しょうがないけどさ。
そんな大それた事をやっちゃった人と友達でいいのかよ、とか言われそうだけどいいんです。
だって私は《最愛》だから。
“最も愛される”んじゃなくて、“最も愛する”《最愛》だから。
戯言抜きに傑作なくらい、私は皆を愛してやまないんだよ。
「だからね、前に姫とは約束したんだ。その前にも曲弦糸で人殺しはしないって約束してたみたいだけどね。で、私はその約束の難易度をちょっと下げた」
「難易度を?」
「うん。“生徒は殺さない”って」
だからか、と一人納得するいーたん。
私としても、姫が2人を殺さないでくれて助かった。
……《策師》萩原子荻の力を、近々借りる事になりそうだから。
「…髪切った?」
「え?ああ、うん。気分転換にね、初めて行ったトコでばっさり短くって言ったら」
セミロングから女子バスケ選手並に短くされちゃったぜ。
涼しくって快適なんだけど、双兄が煩かった。
未だに煩い。
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