零崎月織の人間遊戯

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・双識(+α)と。


「月織ちゃん!今日こそはこの服を着て私とお出か」

「私は仕事と制服以外でスカートを履きませんので」


しゅば!とどこかからゴスロリ服を出してくる双識は一言で切り捨てられた。

だが双識はこんな事ではくじけない。それを分かっている月織は深い溜息を吐いた。



「それはいけない!年頃の女の子はスカートを履かなくては!それもちゃんとスパッツ無しで!」

「前半にも後半にも大いに反論いたします。服装は個人の趣味です、変な口を出さないで下さい。
ってか、怪我は大丈夫なんですか。抉れてたどころか穴が開いてましたけど」

「それは私の月織ちゃんに対する愛の力で」

「いりません丸めて不燃物としてでも出しちゃって下さい」



あれ、私こんな敬語で毒舌キャラだっけ。

ふと月織は思うが、すぐにどうでも良くなったらしい。


『だって双識=変態=無法の方程式』


いくらなんでもその方程式は酷いですよ月織さん。




「月織ちゃん家賊に対して敬語は駄目だよ!さぁ!レッツセイお兄ちゃん!」

「うざいうっさいとりあえず手に持ってるゴスロリ服を下ろしやがって下さいお兄ちゃん」

「ぐっふぅ!お、お兄ちゃんって……お兄ちゃん…何ていい響き……」

「月織…あんまり調子に乗らせると面倒だっちゃよ」


エプロン装着の軋識が言う。ちなみに現在時刻は12時まで後10分ほど。

今日のお昼は大将こと軋識が当番です。



「潤より面倒事を起こせる人がいるなら見てみたいな★」


あれ、なんか背後が黒くて吹雪いてますよ月織サン…





[♪〜♪〜]

「ん?軋兄ぃー、携帯鳴ってるよー」

「んぁー、待つっちゃ。今手が離せないっちゃ」


双識を沈め…ゲフン部屋に戻らせた月織がリビングから声をかけると、昼食作りに勤しむ我らがヘタレ大将、軋識は待てと言った。

バイブは何度か繰り返して鳴り止んだのでメールだったらしい。
……彼にメールする人物なんて一人しかいない。


「おい月織、パソコン光ってたぞ」

「あ、うん。ご飯食べたら見る」


何だろう、このほのぼの空間。こんなのが本当に殺人鬼一賊なんだろうか。

―――などと。

つらつら戯言めいた事を考えながら本日の昼食、ボンゴレスパゲッティを月織が頬張っていると軋識が聞いてきた。



「そう言えば最近“表”が騒がしいっちゃ。月織、何か知ってるっちゃか?」

「んー。潤からは何の連絡も無いなぁ…助手以外じゃ滅多に仕事なんてしてないし」


彼女は若干15歳ながら、ちょくちょく仕事をしている変わり者である。

さらに、一賊で唯一その重複生活を隠していない。隠そうともしていない。
彼女の“顔”は3つ。


1つは《人類最強》哀川潤の妹、《人類最愛》哀川瑠奈。
請負人助手という立場ではあるが、たまにソロで活動する事もある。

2つ目は《死線の蒼》のチームでありながら彼女の所有物ではないメンバー、《空色少女》(スカイレディ)。
活動はネット上だけ、しかも名前は伏せられたままだがハックもクラックも出来る有能者。


そして3つ目、零崎一賊の末妹《暴虐王姫》(エンプティチャイルド)零崎月織。
ただしこれだけは仕事はしていない。殺人鬼だから当たり前と言えば当たり前。



「ごちそーさま」


食べ終わった皿を片し、部屋に戻りパソコンを操作してメール画面を呼び出す月織。
差出人は《人類最強》こと哀川潤だった。

開こうとした直後に着信を知らせる携帯。



「もしもし?」

『あ、瑠奈か?ちょっと仕事頼みたいんだけどさ』

「珍しいね、潤が私に頼むなんて」

『ちょっと厄介が重なってな。あらすじはメールで送っといたから、明日にでも行けるよう準備はしといてくれ』

「オッケー」


通話を終了させ、メールを開いてみる。
そこには仕事の大雑把な、むしろ大雑把過ぎる内容が簡潔な文章で書かれていた。


とりあえず目を通して、ふと日付を思い出す。



「そう言えば、そろそろ澄百合の時期かぁ……姫、生徒は殺さないって約束守れるかな」


出来れば守っていてほしいけれど…と、仕事の内容を思い返して深い溜息を吐くのだった。





(策師な彼女の力を借りるかもしれないから)
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