戦国への来訪者

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魔物が出現する日…下弦の月の日の前日。

白が残り香から割り出した地点…街道から少し外れた森の中に彼らはいた。
時間は太陽が中天を通り過ぎた辺りである。



「ていうかさー。言われた通りにしてるけど、そっちの白いのが言ってた事って当たる訳?」

「噛むぞコラ」

「白の嗅覚をお前らと同じにすんなよな。俺もそこそこ利くって自信はあるが白には負ける」

「…どうして残り香から次の出現位置と時間が分かるんだ」


カリカリとあちこちの幹に爪でマーキングする白を見(守り)ながら飼い主と忍ズが言葉を交わす。

時折白からも非難めいた声が飛ぶが全てスルーされていた。



「…………何となく、ッスかね?」

「アンタねぇ…ッ!」

「やめろ迷彩。何度も言ってるが白はお前らとも俺とも違う種族なンだよ。返しに聞くが、テメェは気配を読む感覚を何て言う?」

「そんなん感覚としか言いようがないでしょ」

「長、語るに落ちている」


瘴気を嗅ぎ分けるのも気配を読むのも結局は感覚の1つ。
半ば以上呆れた才蔵の声に佐助は一気に顔をしかめた。



「ま、明日の夜になりゃ嫌でも感じるだろうよ。人によっちゃ強制的に感覚が広がって悶え狂う奴とか出るがな」

「ちょっと待ってそれ本当?嘘じゃないよね?むしろ嘘だよね?」

「あー、たまにいるッスよねー。高密度の瘴気に感化されて(一時的に)使い物にならなくなる奴」

「え……」

「悪いと中てられて廃人(寸前)になるよな」

「血飛沫が見たくてそれ浴びたくて堪らない、って奴もいたッスよね」

「もうやめてェェェェ!!」



『……哀れな』



遊ばれている事に気づかない長。






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