戦国への来訪者
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side:月宮
俺が伊達に雇われて3日目。
どうやら眼帯は脱走癖(またの名をサボり癖)があるらしく、今日も引き続き執務で缶詰になっていた。
城にいても暇な事この上なし、って訳で俺は只今城下を散策中。
昨日、案内(もとい監視)だとかとか言っておいて伊達二号が迷子になったせいで、地理把握どころかどんな物があるのかも見れて無かったし。
「あの人、この間政宗様に連れられていた…」
「伊達軍の人なのかねぇ…それにしちゃ出で立ちも妙だし…」
「聞く所によれば何でも、魔物専門の退治屋だとか」
「それじゃあ人間の私らに勝ち目なんてある訳ないじゃないか」
―――常人と比べ数段性能の良い俺の耳が、拾わなくてもいい“音”まで拾う。
目つきが悪い自覚は十分にあるし、何より俺の目は黒い髪色とはまるで不釣り合いな茶金だ。
今までも大抵の奴らは俺の目を見ると怯えるか気味悪がるか、そのどちらかだった。
こんな事、もう慣れた。
「もしかしたらあの人も魔物と同じような化け物なんじゃないか?」
「―――ッ」
頭が言われた事を処理した瞬間、頭のどこかでブチリと音がした気がする。
赤く染まる視界を無理やり息を深くする事で落ち着かせ、早足で人が賑わう通りから1つ外れた所へ行った。
「落ち着け…慣れてンだろ、こんな事…!」
ざわざわと騒ぐ自分の血に言い聞かせるように低く呟く。
大丈夫、大丈夫。まだ日は高いし見た目も変化してない。
―――落ち着け。
「くそっ…出て来たの失敗だったか?」
苛々を髪を掻く事で何とか抑え、これなら城で1人筋トレでもしてた方がいい。そう結論づけて裏道を辿り城へと戻る。
門兵は俺の早すぎる戻りに首を傾げていたが、苛ついている俺の様子が分かったんだろう。
何も言わず通してくれた。
「……ちっ」
「随分と荒れてんじゃねえか」
「どうした眼帯仕事はいいのか」
「だから政宗だって言ってんだろうが」
「好きに呼べって言ったのはテメェだぜ」
「ああ言えばこう言う…!」
どうせまた抜け出したんだろう眼帯に適当に返していると、不意に相手の顔から不敵な笑みが消えた。
代わりに浮かんだのは…疑問と、不安?
「城下で何かあったのか?eyebrow(眉)の間に皺が出来てるぜ」
「放っとけ。テメェにゃ関係ねェよ」
「殺気っつーかaura垂れ流しで言われてもな。今のお前なら小十郎と張り合える」
「何でだオイ」
ガラの悪さか。自覚はしてるんだから放っとけ、それこそいらん世話だ。
「だから―――」
「政宗様、城下にて魔物が」
「何!?奴か?」
「恐らく。足止めをしておりますが、あまり長くもちませぬ」
ピン、と場の空気が張り詰める。そんな中で俺は一度息を零し、跳躍して塀の上に乗った。
瓦は…まァ、割れるだろうな。
「方角どっちだ」
「そこから二時の方角へ」
「了解。ちっと壊れるだろうが勘弁してくれや!」
上体を低くし足に力を込め向かう方角を睨む。
蹴った足場から聞こえた存外に大きく鈍い音は聞こえないふりをした。
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