戦国への来訪者
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「これが日の本だ」
眼帯の城に連れて行かれ、何の部屋かは知らないが広い割に物が少ない所で待機を命じられてしばし。
この国の地図やら色々と持って戻って来た眼帯の第一声が上だ。
「これ…東部の列島に似てる…?」
そして俺が抱いた違和感。
東部のさらに東、極東なんて言われてる辺りの形が何となく似ているんだ。
「そういやお前んとこのland(土地)はどうなってるんだ?」
「ああ、関中って呼ばれてる地域はこう…でっかい丸を描いてるんだ。その真ん中にほぼ同心円の中央部、そこから東西南北4つに地域が分かれてる」
畳の上に指を滑らせ大雑把な地図を描く。
規模はよく分からんが、このヒノモトとかいう土地の数倍はあるだろう。
………ひのもと。
「…あのよ、変な事を聞くが“ひのもと”ってどう書く?」
「Ah?日付の“日”に書物の“本”だ」
「…………ここ日本地区かよ!」
よしよく分かったとりあえず今まで疑問だった言葉とか文化とかの類似点は解決だ。
「にほん?」
「あー…と…俺もそこまで詳しい訳じゃないんだがな。何百年も昔、東部の更に東の地域は日本っつー島国だった。それが海底火山が噴火して隣の大陸と地続きになったんだとさ」
(…って、設定にしといて下さい)
「I see.それならアンタが南蛮styleのくせにこっちの生活様式に慣れてるのも頷けるぜ」
「だからこれはチャイナ、チャイニーズだ。洋物は南の方だぜ」
「そんなもんなのか」
「ああ」
(って設定にしといて略)
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「で、何が知りたいんだ?教えられる範囲で答えるぜ」
「俺からでいいのか?」
「Yes.話し聞く限りじゃ随分とlife styleが違うみてえだからな。アンタの常識でもこっちじゃ通じないってのもあるだろうし」
「そりゃそうだ、言われてなかったらわざわざ魔物が何かなんて答えてねェ」
さて、それじゃ何から聞くか…地図は見たから大雑把な地理関係は分かったし、貨幣価値も今じゃなくていい。
眼帯は国主らしいから情勢聞くのもありだが、こっちがどうなってんのかさっぱりな以上聞くだけ無駄だろう。
「んー…ああ、そうだ。城下っつーの?ここに来るまでに通った町、あそこで武装してる奴全然見なかったンだが何でだ?」
……何で強面は床に手ェついて項垂れるんだ。
何で眼帯そこまで盛大な溜息つくんだ。
「まさかとは思うが…アンタのいた世界じゃ商人も武器を持ってるってのか…?」
「そもそも戦えなけりゃ生きてけねェよ。都に住んでるなら別だが」
「Ah−…そうだな、こっちの世じゃ武士、町人、商人、農民って身分があるんだ。この中で武術を身につけてるのは武士と、後は一部の商人くらいだな」
「戦わなくても生きていけンのか?」
「武術を身につける余裕が無いだけだ」
補足したのは強面。
ちょっとばかし理解の外だが、魔物がいねェって事は目に見える脅威も無ェって事なのか?農民ってのは畑作る奴の事だろうし。
……謎だ。
「後はまァいいや。分かんねェ事があったらそん時聞くわ」
「もういいのかよ?」
「俺としちゃここが日本地区に相当する場所って分かっただけで十分だ。それに何が違うのかもよく分からねェしな」
「Ha,それもそうだ。じゃあこっちからいいか」
肯定に一つ頷くと眼帯は表情を引き締める。
マジな話、なんだろう。さて、何を聞かれるのやら……
「…monsterでどんなdish(料理)が出来るんだ?」
ズシャァ。
ずっこけた俺は悪くないと言ってくれ。
マジな顔して聞くのが料理って。さっきのではまったのか。
「………政宗様は何を聞いたんだ?」
「あー…魔物使ってどんな料理が出来るか、だと」
「…………政宗様、少しあちらでお話しましょうか」
「wait小十郎、お前顔が」
「問答無用にございます。月宮、悪ぃがもう少し待っててくれ」
「ちょっhelp―――」
パタン。
―――その後に聞こえてきた悲痛な声は、聞こえないフリをした。
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