戦国への来訪者

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「う〜〜…」

「だから慶次、ンなに嫌なら来なくていいって」

今、俺と慶次は大阪へ続く道を歩いている。

本当は俺が自分で、慶次が自分の馬に乗って走った方が早いンだが…他のガキらを白と、一応小太郎に任せる時に『小さい子には辛いだろうから、俺の松風にお乗りよ』とか言って貸し出してた。

とりあえず甲斐には真田が、北条には小太郎がいるからこれ以上俺が出張る必要は無い。

なら西に行くか、となった時に慶次が突然言い出した。

『大阪に行くなら俺も連れて行ってくれ』と。

「嫌じゃないんだよ、ただすっごく行き辛いだけで。…でもここで逃げてちゃまた逃げたままだと思ってね。悪いね、天音をダシにするみたいで」

「構わねェよ、どうせコトのついでだ。…しっかし、あいつら頷くかな」

「はは…それは如何とも言いがたいねぇ」

まァ、元から駄目元の全国行脚なンだし構わねェと言や構わねェンだけどな。

「…聞かないのかい?」

「何をだ?」

「俺と、秀吉に何かあったのか」

こいつの“用事”は豊臣秀吉にあったらしい。
が、正直言って興味無ェ。

それよりも気にかかる不可思議な気配に意識をずらしながら吐息を零した。

「興味無ェよ。たとえ慶次と豊臣が知り合いだろうと念友だろうと」
※念友…所謂“おホモだち”

「ぶっ!?違うからな、絶対違うからなそれ!!」

「…分かってるっつーの」

汚ェなツバ飛ばすなよ。ものの喩えじゃねェか。


*****


くだらねェ事を言い合って、とりあえず小腹を満たそうと適当な店に入ったら、いつぞやと同じように城へ強制連行された。

今回は『闇月か』って確認取ってからだったが、あの強引さは石田に通じるモンがある。あいつの部下か?

つーか慶次は完全にシカトなんだがそれでいいのか警備。

「やあ、月宮君…と、慶次君も来ていたのか…」

「…何でンなやつれてンだ」

「ちょっと、緊急事態でね…君達こそ何か用があるんじゃないのかい?」

「俺の用つっても、っ!?」

げっそりした竹中に切り出していいモンか、と少し迷った隙をつくように刺さった肌が粟立つ感覚。

それに従い飛び退けば、繋がった球体が俺の頭があった辺りを通り過ぎる所だった。

…慶次、いつの間にンな離れた所に退避してやがる。

「何だ?」

「…吉継君」

「ヒヒ、真に素早いスバヤイ。不意を突いたと思うたがナァ」

さっきの一撃しか来ない事と敵意が無い事に眉を寄せると、竹中が疲れた声音で誰かを呼んだ。

確か……前に来た時、取り憑かれてた奴だったか?

襖が開いた先には、やたらデカい座布団というか持ち手の無い輿というか、そんな物に座った包帯男がいた。

人相は包帯まみれで分からねェし、声もしゃがれてはいるが結構若いンじゃねェのかこいつ。

こう、気というかそンなのが年老いたように思えねェ。

「こうして相見えるのはハジメテよナァ。我は大谷吉継、先だっては実に“世話”になった」

「悪く思うなよ。あれが確実な方法だったンだ」

「ヒ、分かっておるわ。体の自由は利かなんだが、耳は聞こえておったでな」

「あれから平気か?やたら包帯まみれだが」

何気なく聞いた一言に竹中、大谷の空気が分かりやすく固まった。

竹中はさすがと言うべきか、すぐにいつもの食えねェ笑みに変わったが。
大谷はそれからもう少し間を空けて、それでもまだ口元を引きつらせていた。

「…これは我の業よ、ゴウ。あの童とは関係など無いわ」

「へェ。ま、何ともねェならそれでいいさ。ンで竹中、急で悪ィんだが移住の許可って貰えるか?」

大谷の話題をぶった切って(掘り下げるモンでもねェだろ)、移住の話を持ち出すと2人揃って虚を突かれたような顔をしていた。
大谷の場合はそんな雰囲気。

それと慶次はいい加減に隅から戻って来い。

「えーと…君の、かい?」

「いや、そうじゃなく…あーそうか、あンたらにゃ話してねェな」

どこまで話せばいいか…とりあえず突っ込まれたら話せばいいやな。

そう自己完結して、成り行きでガキの世話をしている事やらその他諸々、何度か繰り返した説明を聞き終えると竹中は『ふむ』と一つ頷いた。

「君が最近あちこちの領地に顔を出していたのはそういう理由か」

「何で知って……ああ、商人とかに配下潜らせたら分かるか。俺目立つだろうし」

黒い唐服(チャイナ)=闇月って式が既に定着してて、わざわざ着替えるのも面倒だしどうせもうすぐ帰るんだし、とほとんどチャイナで出歩いてたからな。

流石に道行く婆に拝まれた時は驚いたが。





―――――
お地蔵様と同じ感じでナムナムされた。
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