戦国への来訪者
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―――おい、聞いたかい?また村が襲われたそうじゃないか
―――嫌だねえ、闇月の方でも何でもいいからどうにかしてくれないかしら
―――城の武将さんはどうなんだい
―――おやアンタ知らねえのか。真田様は駄目さ、いきなり現れた女に夢中になってらっしゃる
―――別嬪なのは認めるけどよぉ、あんな女は駄目だ
―――だよなぁ。真田様には猫撫で声で媚売って俺らにゃ睨みを利かせるんだもんな
―――真田様が苦手な女を克服できた事を喜ぶべきなんだろうけども…
―――ちょっとあれは、なぁ…
(町の人々の話から抜粋)
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side:佐助
『ありゃりゃ、もう噂が広まってる』
気配を殺したまま音も立てずに木の枝に降り立ち、眼下で言葉を交わす町人達を見やる。
話のタネは大体同じ、魔物、闇月の方、襲われた村、天女、と。
大体把握した後に戻ろうと腰を上げかけた時だ。
「そういや知ってるか?襲われた村に人が戻って来たんだとよ。それも、不思議な事に子供だけが」
「子供だけ?一体どういう事さそれは」
「いや俺も詳しくは知らねえよ。ただな、どう見ても12か3くらいの子供が野菜や獣のなめし皮を持って山から下りてくるんだと。親父さんはどうした、って聞くと町に来れないから俺が来てるんだ、ってよ」
「別によくある話じゃねえのかい?確かにちょっと若ぇとは思うが」
それでその話は終わり、今度はどこそこの娘と息子が…なんて話に変わって俺様はこっそりとその場を離れた。
一応、報告はしときますか。
―――旦那も、何であんな女に懸想するかねえ。
敵意なんかは無さそうだから監視は部下に任せてるけどさ。
「はぁあ…給料上げてほしいよ、全く」
報告に向かうは上司の上司…武田の主、大将こと武田信玄様にだ。
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