戦国への来訪者
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「朝餉はいいが…何でマンツーマン…」
時は若干…一刻ほど遡る。
本日も暑苦しい雄叫びで(強制的に)目が覚めた月宮は、むにゃむにゃと夢心地の白を放置して身支度を整えていた。
そしたら女中が朝餉ですと伝えてきて、前もそうだったので大人しくついて行って、何故だか信玄公と向かい合って2人っきり(ここ重要)だった。
何が起きた。
「万津…?」
「一対一、または2人きりって意味だ。いいのかよ、俺思っくそ外部の奴なんだが」
「ふははは、案ずるでないわ。そなたが儂に牙を剥く事は考えられん」
「あ、そ…」
もりもりと玄米ご飯を食べながら月宮はぼやいた。
別に殺意無く殺したり害意無く斬りつけるくらいは出来るのだが…そう思っただけで実行する気は全く無い。
まだ報奨も貰ってないし。(本音)
『味噌汁美味いな…猿飛が作ってるって聞いた時は噴きそうになったけど。何なんだ、伊達じゃ片倉がオトンだったし武田じゃ猿飛がオカンなのか。どちらにせよ飯が美味いからよし』
「しかし、お主はほんに美味そうに食べるの」
「食物は全ての命の源、それを糧として命を繋ぐ以上粗末にする訳が無ェ」
「おお、そうか。なるほどのぅ」
うむうむと頷く信玄公はアウトオブ眼中のまま、月宮はお浸しを頬張る。
柔らかい中にシャキシャキと芯が残っていてこれも美味しかった。
主菜の魚も脂が乗って身が締まって美味しい、のだが……月宮にとっては物足りない。
量が、ではなくて。
食事といえばイコールで結ばれてもいい肉類が一切無い事だ。
出来れば脂が乗った厚切りを焼いたやつ(ステーキ)が食べたい。よし出発したら適当な魔物を仕留めて食おうそうしよう。
そんな事を考えながら魚を食べ終えた。
「話を、聞かせてくれぬか」
「何をだ」
唐突な信玄公の問いに月宮は一切の間髪も入れず返す。
不敬、の言葉が一瞬頭をよぎったが今更ンな事知るか、とすぐに自己完結してしまった。
素性に関しては言う気などさらさら無かったので、それ以外なら少しくらい構わない。
そんな程度の認識で沢庵を1つ掴み―――
「お主の、家族の事じゃ」
ぽろ、と摘まんだ沢庵が落ちた。
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