戦国への来訪者

□7
1ページ/9ページ

side:no

「朝餉はいいが…何でマンツーマン…」


時は若干…一刻ほど遡る。



本日も暑苦しい雄叫びで(強制的に)目が覚めた月宮は、むにゃむにゃと夢心地の白を放置して身支度を整えていた。

そしたら女中が朝餉ですと伝えてきて、前もそうだったので大人しくついて行って、何故だか信玄公と向かい合って2人っきり(ここ重要)だった。
何が起きた。


「万津…?」

「一対一、または2人きりって意味だ。いいのかよ、俺思っくそ外部の奴なんだが」

「ふははは、案ずるでないわ。そなたが儂に牙を剥く事は考えられん」

「あ、そ…」



もりもりと玄米ご飯を食べながら月宮はぼやいた。

別に殺意無く殺したり害意無く斬りつけるくらいは出来るのだが…そう思っただけで実行する気は全く無い。



まだ報奨も貰ってないし。(本音)




『味噌汁美味いな…猿飛が作ってるって聞いた時は噴きそうになったけど。何なんだ、伊達じゃ片倉がオトンだったし武田じゃ猿飛がオカンなのか。どちらにせよ飯が美味いからよし』

「しかし、お主はほんに美味そうに食べるの」

「食物は全ての命の源、それを糧として命を繋ぐ以上粗末にする訳が無ェ」

「おお、そうか。なるほどのぅ」


うむうむと頷く信玄公はアウトオブ眼中のまま、月宮はお浸しを頬張る。
柔らかい中にシャキシャキと芯が残っていてこれも美味しかった。
主菜の魚も脂が乗って身が締まって美味しい、のだが……月宮にとっては物足りない。

量が、ではなくて。


食事といえばイコールで結ばれてもいい肉類が一切無い事だ。

出来れば脂が乗った厚切りを焼いたやつ(ステーキ)が食べたい。よし出発したら適当な魔物を仕留めて食おうそうしよう。


そんな事を考えながら魚を食べ終えた。



「話を、聞かせてくれぬか」

「何をだ」


唐突な信玄公の問いに月宮は一切の間髪も入れず返す。
不敬、の言葉が一瞬頭をよぎったが今更ンな事知るか、とすぐに自己完結してしまった。

素性に関しては言う気などさらさら無かったので、それ以外なら少しくらい構わない。



そんな程度の認識で沢庵を1つ掴み―――


「お主の、家族の事じゃ」


ぽろ、と摘まんだ沢庵が落ちた。






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ