零崎月織の人間遊戯
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ドチャッ。
「―――閉幕、と。さて、こんな血生臭い所はとっとと離れましょう。行きますよ」
その場にいた奴らを余さず…否、観察対象である沢田とリボーン以外を残らず血と肉塊に変えてから振り向いた。
その際に持っていたナイフは捨てた、どうせ脂でもう使い物にならない。
“始末屋”がここを片付ける時に回収して洗ってから返してくれないかな、後で聞いてみよう。
「その前にオレの質問に答えろ。お前は何者だ?」
「私は―――」
[♪〜♪〜]
「失礼」
リボーンに答えようとした直後、携帯の着メロが鳴り響いた。
一応、形式上一言断ってから通話ボタンを押す。
「もしm」
『るーちゃんるーちゃんるーちゃん!?今どこにいる!?護衛対象とかその他諸々が』
「落ち着いて。聞こえてるから」
あまりの音量に思わず腕を思いっきり伸ばしていた。
これじゃ向こうの2人にも聞こえてるんじゃないだろうか。
少しだけ落ち着いたのか電話の相手、久渚友は先ほどよりも声量を押さえて問いかけてきた。
『な、名前!名前教えちゃった!?』
「まだだけど。それがどうかしたの?」
『良かったぁ…えっとね、その場にるーちゃん以外の誰かいる?』
「誰かっていうか…護衛対象とその家庭教師がすぐそこに」
電話の向こうで友が盛大な溜息をついたのが分かった。
電話口に息吹きかけないで何かぞわぞわする。
『本当に間一髪だったんだね…えっとね、るーちゃん。詳しい事はメールで送ったけど、まだ名乗っちゃ駄目だよ。“どの名前”も、言っちゃ駄目』
「…全部?」
『うん、全部。詳しくはまた後でね。とにかく今は言わないで!それじゃね!!』
そこで唐突に切れた通話。
ツー、ツー、と切断音が鳴る携帯を見て思わず苦笑した。
まぁ、彼女の言う事に従って損は無いだろうけど。
「話の途中でしたね。何者だ、でしたっけ?」
「ああ」
「分かりやすく言えば《人類最強》の代理でやってきたあなたの護衛です、沢田綱吉」
「名前は?」
沢田に口を挟む暇を与えずにリボーンはさらに問いを重ねてきた。
ああやだやだ、自分が優位だと思って疑わないこの態度。
まあ今の所は“護衛”だし?
精神的に幾分か大人な私は何も言わないであげるよ。
「丁度先程、とある方から警告がありましてね。まだ名乗る事は出来ないんです」
「ふざけんじゃねぇ。そんな奴を信用できるはずがねーだろ」
剣幕を更に鋭くさせるリボーンに肩を竦めながらそうですね、なんて軽い調子で返した。
信用なんていらないっての。
「別に信用されなくっても構わないんですが…じゃあ便宜上、“るー”と呼んで下さい。あだ名みたいなもんですし」
なんなら《人類最強》に確認を取ってもいいですよ?と続けると、リボーンは渋々黙った。
ただ瞳には警戒の色。
全く、私を疑うのは構わないけど潤を疑ってるんなら今この場でバラバラにしちゃおっかな。
あ、もちろん本体じゃなくて銃とか帽子とかの付属品を。
本体を解体しちゃったらクライアントに文句言われる。
「ともかく、いつまでもここにいるのは不要です。彼らは放置しておいて平気なので、行きましょう」
もう一度促すとようやく沢田が足を踏み出しかけた。
ただ知らず腰が抜けていたのか、へたりとその場に座り込んでしまう。
……こんな所でダメっぷりを発揮しなくてもさぁ。
「おい、何腰抜かしてんだダメツナ」
「う、うるさいな…だって、目の前でこんな……」
大量虐殺を。言いかけてやめたのが分かった。
大方そうした本人が目の前にいるのを思い出して、だろうけど。
やめるくらいならまず言うなよ、ってね。
「―――失礼。埒があきませんので」
友からのメールも気になるしお腹も空いて来たし、って事で問答無用に有無を言わさず沢田の体を肩に担ぎ上げた。
…プロのプレイヤーにもなればこれくらい出来ますって。いや彼が比較的小柄で軽量だからってのもあるけど。
出夢なんて自分の体積3倍くらいある相手を吹っ飛ばしたり出来るし。
「あなたの自宅、どこですか?送ります」
「えっと……」
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