零崎月織の人間遊戯

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・曲識と。

「レンがほぼ寝たきりのままだと聞いたんだが大丈夫なのか」

「ありゃ曲兄。本人さっき痛み止めの副作用でベッドとお友達になったけど、どうする?」

「久しぶりに帰ったんだ…のんびりするのも、悪くない」

「飲み物はコーヒー紅茶フルーツジュースがあるけど何にする?」

「コーヒー、砂糖1つだと有難い」

「りょーかい」



現在、人識と軋識は夕飯の買い出し中なのでリビングには2人だけだ。
しかし沈黙は気まずいものではなく、どちらかと言うと某道にある曲識が経営するあのバーのような、そんな心地よさ。

インスタントでごめんね、と月織が差し出したカップには黒い液体。
彼女が持つ方には薄茶色の液体がそれぞれ入っている。



「ありがとう。…妹が淹れたコーヒーを飲むのも、悪くない」

「あはは、ありがと。ねえ曲兄、哀川潤のこと…まだ、好き?」


ぴく、と極々わずかに揺れた曲識だったが、すぐに平静に戻り

「…ああ」

…否。若干赤面しながら小声で肯定した。
照れているらしい。


「うーん…個人的にはどっちも大事な身内だから2人がくっ付いたらすっごく嬉しいんだけど」

「…彼女は、僕の事を覚えているのか?」

「多分ねー。潤、出会って何かしら感じる所がある人は全部覚えてるらしいから」

「そうか…」


《人類最強》と異色の零崎《少女趣味》(ボルトキープ)。両者が結ばれたならかなりのスキャンダルになりそうだが。

まあ自分自身が大分スキャンダラスな肩書きを持つ月織は気にしていない。
むしろ原作を知っている分『どうせ両想いなんだからくっつけよおまいら』な気分である。




「だが…それで月織の手を煩わせる必要は無い。僕と彼女が引き合う運命ならまた会えるはずだ」

「曲兄って結構ロマンチストだよね」

「何を言う、男はみなロマンチストだ……らしい」

「……誰から聞いたのそれ」

「レンだが…どこか、間違っていたか?」

「どこがと聞かれたら回答に困るけど、多分現実主義な男性もいると思うよ?」



『いや戯言ワールドの男性陣ってロマンチスト多いけどさ。いーたんとか狐さんとか筆頭に』


思ったけど言わないでおいた。


「そうだ月織、聞くが何か楽器は出来るか?」

「楽器?んー…長らくやってないけど一応ピアノとアコースティックギター、かなぁ」


もちろんその経験はトリップ前、腐女子な高校生やってた頃の経験である。

ピアノは幼少から惰性で続けていたレッスン、ギターは音楽の授業で折角だからと選んだもの。



「そうか…アコースティックではなくクラシックのギターならバーにある。今度機会があればデュエットしよう」

「え、ホント!?でも出来るって言ってもコードと簡単なメロディだけだよ?」

「コードが出来れば後は応用だ。練習して回復祝いにでもレンともう1人の妹に聞かせてやろう」

「いいねそれ!舞姉もそうだけど双兄は泣いて喜びそう」

「レンと舞織を喜ばせるのも…悪くない」



後日、月織と曲識のコンビがよく街中で見かけられたとか何とか。






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