頂き物

□乾燥は乙女の敵?
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また、冬が来た。
気温が下がり、それと同時に空気も乾燥してきた。
それも、秋の頃よりもずっと。

「えっと…何処に置いたかしら…?」

部屋の中、私はある物を探し続けていた。
もうすぐ登校時間、だけど、それが見つからないだけでも私は慌てていたかもしれない。

「机の引き出しやクローゼットの中にも無かったし、この部屋の中には無いのかしら?」

昨日は鞄の中に入れて…それから…それから…?
駄目、思い出せない…

「何を探しているんだ?」

ルーク先生が不思議そうな顔をして私に視線を向ける。
私は咄嗟に口元を隠す。
だって、今の状態の私を見られたくなかったから。

「な、何でもないですから!」

「?」

あ、やっぱり乾燥してザラついてる。
ほんの微かにだけ、鉄の味が舌に感じられた。

「何でもないのに口元を隠す筈が無いだろ?」

一瞬にして口元を隠していた手をどかされる。
前を向けば、翡翠のような瞳が目の前に…。

「…ぁ…」

唇が重なる。
腰が抜けそうだったけど、抱き寄せてくれる腕のお陰で立っていられた。
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