キリリク&拍手文

□魔法使い
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―あの






――ちょっと






「おい」



『…何よ』

「何居眠りしてるんですか」

『…──Σあああっ;!?』

「うるさい。」




ピシャリ。

寝起きの私を鋭い声で叩き起こすオッドアイが目の前にあった。



隣に座っていた可愛い男の子は居ず、いつの間にかバスに残っているのは私と骸だけ。

(そして彼は私の前の席に移動している。何故だ;)


それでも動き続けるバスは、まだ最寄りのバス停を通りすぎていないみたいで、ホッと胸を撫で下ろす。

だけど目の前にいる人物が人物なだけに、私は口をつぐんで




「…」

『…』




ふいと目を逸らして窓の外へと移した。

ガラス越しに見えた骸の顔はやはりムッとしている。

あ、口開いた。




「…何故そこに座ったんです?」

『、骸が嫌いだから』

「…」

『骸だって私のこと嫌いなんでしょう?だから席をわざわざ離したんじゃない』

「僕は、」

『隣に荷物なんか置いて座らせない気でさ!だったら私はそれに従順に従うまでよ』




ふんっだ。もう骸なんて知らないもんね!




それからは二人、何も話さずにバスに揺られた。
















―次はΔΔ、ΔΔです。…



『あ、次だ』

「…行くんですか?」

『当たり前。お見送り不要だから』

「する気なんてそうそうありません」

『あっそ。それは何より』




妙に時間が経つのが遅い気がしたが、無事最寄りのバス停に到着。

私は足をずかずか進めてバスを降りた。

再び発車するバスの中には、気楽に椅子の背もたれに寄りかかってくつろぐ彼がいた。



こっちを一回も見ずに何なんだアイツは!どんだけ根に持ってるのか。

自分が正義だと思ってるんだ。そりゃあ私が悪かったのかもしれないけど…




去り行くバスをちらりと見る。

彼の姿は見えるはずもない。




『…寂しいなんて、思ってないからね』



むしろ思ってやるもんか。

だって、



「何をつんけんしてるんですか」

『だってこれじゃ骸に惚れて、る』




よく知る声に振り向く。
街灯に照らされたそこには、

見知った髪型の彼がいた。




『む、骸!なんで、バス、乗ってたじゃ…』

「降りましたよ。きちんとね」

『あれ終バスだよ!?家に帰れないじゃない』

「いえ、帰ります」




グンと腕を引かれて前につんのめる。

骸はそれを予期していたかのように私を支え、抱き締めた。




『ちょ、離してよ!』

「嫌です」

『何でさ!』

「‥大嫌いなんて、嘘ですから」

『!』

「…好きですから」


「君も、嫌いだなんて言わないで下さい」




最後のほうの言葉は消え入りそうだったはずなのに、

私の中では大きく響きました。



(そこだけ魔法にでもかかったかのように)




おしまい☆



初の本格的ツン(デレ)骸!きちんとツンになってるかなぁ…不安な所。
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