雨が繋ぐ絆
□3.傷、見せてみ
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「よし。じゃあ、まぁ色々聞きたいことはあるが、とりあえず…。」
腰に両手をあてて、にこっと少年を振り返る。
「…………。」
「俺は、篠崎 孝宏。この世界でサラリーマン…あぁ、言ってもわかんねぇか…。えっと、労働者って言えばわかるか?そんな感じで毎日せかせか働いてる。ま、何でも好きに呼んでくれ。少年よ、居候つっても、もう赤の他人じゃねぇからな。家事もさせるしゴミ出しもちゃんとさせるぞ。自分の家賃、飯代ぐらいは働いてもらうぞ。でもまぁ無理はさせねぇから安心しろ。」
またもにっこり笑って見せる。しかし少年はそんな孝宏の顔を凝視したまま、動かない。
「な、なんだ?まだ何かあんのか?」
そんなに顔をじぃっと見られては、何かこちらが悪いことをしたような気分になってしまう。
「別、に。」
と無表情に告げて、少年はソファの端にちょこんと座った。
黒くて艶々した耳と尾がぴくりと揺れた。
「そか。なら、話は終わりにして朝飯にしようぜ。あ、でも…その前に俺着替えてくるから。ちょっと待ってな。」
ソファに可愛らしく座る少年を横目に見やって、孝宏は寝室へ向かった。
少年の超能力(?)のおかげで暖かいベッドで眠れたし、服も綺麗に乾いていて、肌の感じは最高だ。
だが、ワイシャツのままだとあまりくつろげないので、着替えるために孝宏は、寝室のクローゼットをぱたんと開ける。