雨が繋ぐ絆

1.寒いのは…嫌いだろ。
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サァサァと音が聞こえる

静かで、とても落ち着く音。

今にも沈んできそうな重い空を見上げ、

孝宏は深く息を吐き出した。
「雨かよ、…最悪。」

大手IT企業に勤める孝宏は
入社4年目の社員だ。

これといった特技も特徴もなく、まさに平々凡々な人生を歩んできた孝宏。
しかし、勉強は少し得意な方だったので、一流とまではいかなくても、なかなか有名な企業に就職が叶った。

入社当時は失敗ばかりでよく上司にこっぴどく叱られたものだが、今ではそれなりに仕事も任されるようになった。

近いうちに新しい商品を売り出す予定で、孝宏はその企画部長補佐を務めることになったのだ。
今日はそのせいで残業が長引き、いつも以上に遅くなってしまった。

先程振り出した雨に捕まって、苛立ちも倍増。
傘も生憎持っていない。

仕方なしに孝宏はカバンで頭を雨から庇うようにして
駅まで駆け出した。

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