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ケンカの訳
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それは本当に些細なことだった。

ただほんの少しの思い違いと、ほんの少しの意地が…波乱を呼んだ。



「なぁ駿二、お前って2組の溝渕と付き合ってんの?」

そんな突拍子もないことを友人から言われたのは一昨日の昼休み。

確かに事実だが、付き合ってることは2人ともこの2年間ひたすら隠してきたし、学校や公の場ではそういう雰囲気も控えて来たはずだ。

だからまさか友人からそんな疑うような台詞を聞くとは思わなかったから、
俺は必要以上に動揺してしまった。

「は!?…え!?んなわけないやろ!何言ってんねん。」

「本当に?」

「本間もなにも、あいつとはただの親友やん。」

「本当にそれだけ?」

「しつこいって。あいつと俺はなんもない!!ただの友達。それ以上も以下もない!!てか男同士とか気色悪いやろ?」

バレたくなくて、必死で笑顔で言い募った。
思ってもないことを冗談めかしてつらつらと並べ立て、必死にあいつを守ったつもりだった。

けど、

「駿二は…無理に俺に合わせてくれてた…?」

ふと背後から聞こえた声に、俺は蒼白な顔で振り返る。
そこには、ぎゅっと胸に次の授業の教科書を抱えて、今にも泣き出しそうな顔で立っている秋彦の姿があった。

「…あ、…秋彦」

「だったらそう言ってくれたらよかったのに。そうすれば、…俺だって、」

「違っ…違う、秋彦!これは…!」

ショックでふらりと揺れた秋彦の腕をとって駿二は訳を話そうとしたが、くしくも今、俺たちがいる場所は食堂なわけで、しかも昼休み真っ最中なわけで…、飯を掻き込んだり、雑談に華を咲かす生徒で溢れる返っている。
とてもこんな所で落ち着いては話せられない。

何より、先程からこちらを凝視している友人の視線がバシバシ刺さって痛いどころじゃない。

「とりあえず…、ちょっと場所変えへんか。」

秋彦の腕は離さず、駿二はな?と宥めるように首をかしげる。

しかし秋彦はむっつり黙ったままで、答えようとしない。

「なんだ、やっぱ付き合ってんじゃん。」

今までこの成り行きを見ていた友人が、ぽつりと溢した。

「お前はだぁっとけ。」

それにギロリと視線をやって、今度は少し強引に秋彦の腕を引っ張り、食堂を後にした。

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