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この線と空
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「あー、どーすっかなぁ」

ふわり、と口から吐き出された煙が青空に舞う。

「なにが。」

隣に座る、ヤツが言う。

「べっつにー…」

昼間の屋上で野郎2人が煙草をふかしながら、寝転ぶ姿は他人から見ると奇妙に映るだろう。

しかし、本人たちにとってそれは日常であり、日課であった。

「あ゙?気になるだろーが。」

「ゆーくんは気にすることないのー」

「ゆーくん言うな。」

意味のない応酬が繰り返される。

こいつ、悠太郎とは幼稚園から一緒で、良いことも悪いことも一緒にやってきた。
互いに協定みたいなのが自然にあるのだと思う。

誤ってヤクザにケンカ売った時だって、相手を売るなんてことは決して無かった。

「ゆーくん」

「だから、ゆーくん言うなっつってんだろ。」

「きゃー、こわーい」

「うっせ、死ね。」

少しふざけてみたが、一蹴されてしまった。
まぁ、こんな辛口なところも好きなんだが。

ふぅ、と煙を吐き出す。
青空にふく風が煙をさらっていく。

「煙たい…お前、煙草やめろよ」

悠太郎が眉根をよせ、不服そうに呟く。
風によって流れてきた煙を手で蹴散らしていた。

「お口が寂しいんだもん。ゆーくんも吸う?」

少しおどけて煙草を悠太郎の目の前に掲げてみる。

「………………。」

げんなりした顔と目が合った。

「あ、怒った?ごめんごめん」

苦笑で誤魔化そうとしたら、ぱしっと頭を叩かれた。

「ガンになって死ねっ」

「あん?全然聞こえねぇー」

「むしろ俺が殺ってやろうか?」

顔を斜めに構え、見下した視線を寄越してくる。
少々イラッときたが、すぐに消えた。

むくりと起き上がって、真っ青な空を見上げた。
そして、

「お前に殺られるなら、本望だなぁー」

気だるそうに答えた。

「は?」

かなり怪訝そうな視線を向けてくる悠太郎。
それを軽くいなし、真面目な顔を作る。

「俺…さ。」

「何だ、どした?」

「……………。」

「おーい?聞いてるかー」

「やっぱ何でもねー」

言えるわけ、

「はぁ!?っんだそりゃ」

言えるわけが無いだろ。

「まぁ、気にするな?」

お前が、"好き"なんて。

「気にしない訳ねぇよっ」

言えるわけ、無い。



*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇*◇

「で、結局何なんだよ。」

「おまっ、しつけぇ!!もう良いだろっ」

「良くねぇ!!あんな中途半端に切り出されたら、気になるだろーがっ」

お前の、

「そこを何とか気にするな!!」

そういう

「はぁ!?悩みとかあんじゃねーのか!?言ってみろ!!それともこの俺に言うことも躊躇うほどの内容なのかっ!?あぁ゙!?」

口は悪くても気に掛けてくれる優しさが…

「……てめぇが好きなんだよバカヤロー」

胸に染みる。



この線と



(あーぁ、言っちゃったよゆーちゃん。この線越えるつもりなかっのに…)

(……しるか。)

(あれ?顔、赤くない?どしたの?)

(何でもねぇよっ!!覗き込むな!!)

(期待していいの?)

(…!?……しるかっ!!)






 新様へ捧ぐ   相互記念


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