ナナカマドは燃やせない

□第1章 飛び込みホグワーツ特急
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人混みをすり抜けて壁に向かう途中で、ふと赤毛と金髪の女の子連れの夫婦が目に入った。
見た目は至って普通で、ふくろうも連れていないしマントも着ていない。
どう見ても普通の乗客だったが、赤毛の方の女の子のカートに積まれた大鍋とはち切れそうなトランクで、ベティは彼女がホグワーツ生だとわかった。
どうやらホグワーツ特急の入口がわからないらしく、不安げに辺りを見回している。おそらく彼女はマグル生まれの1年生なのだろう。
もうすぐ列車の出発時刻だ。ベティは赤毛の少女に声をかけた。
「こんにちは、あなたもホグワーツに行くの?」
声をかけられたことに気付いた赤毛の少女の顔がぱっと明るくなった。綺麗な緑色の瞳がきらきらと輝いていて、とても可愛い。ベティはすぐにこの少女が好きになった。
「ええそうなの、でもホームの場所がわからなくて…」
ベティはにこっと微笑んで言った。
「あたしも今年からホグワーツなんだ。良かったら一緒に行かない?」
「ほんと?ええ、行きましょ!」
「じゃあ急ごう。ホームは混んでいるから、家族とはここでお別れしたほうがいいよ」
赤毛の少女は急いで家族と軽くハグすると、ベティと並んでカートを進めた。
9番線と10番線の間の壁を通ると、(赤毛の少女は通る瞬間思い切り目をつぶっていた)ホグワーツ特急は本当に出発直前だった。
まず赤毛の少女の荷物を先に入れ、次にベティの荷物。しかし最後の大鍋を列車に乗せようとしたところで汽笛が鳴った。
「急いで!」
赤毛の少女が叫んだが、列車は既に動き出している。
ドアがどんどん遠くなり、ベティがあきらめかけたその時、列車の窓から腕が出てきてベティをぐいっと引っ張った。
「乗れ!」
腕の主は黒髪の顔立ちの整った少年で、ベティを思いっきり引っ張った。
その勢いででベティは列車の窓辺に乗ることができたが、大鍋が引っ掛かってそれ以上中に入ることができない。
「ジェームズ!鍋を頼む!」
「はいよ!」
ジェームズと呼ばれたくしゃくしゃ頭の少年が器用に大鍋を引っ掛かった窓から外し、黒髪の少年がベティを持ち上げて中へ入れてくれた。
「あ、ありがとう」
ベティは息絶え絶えだったが、何とかお礼を言った。
2人の少年は輪をかけて汗だくで、頷くので精一杯のようだった。
やがて呼吸が整ってくると、ジェームズが笑いだした。
「ああびっくりした!シリウスが急に立ち上がったかと思ったら、窓から女の子が入ってきたんだから!」
「あたしも急に引っ張られてびっくりした…でもありがとう、シリウス」
ベティはシリウスと呼ばれた少年に笑いかけた。
しかし、シリウスは仏頂面で、
「気にしなくていい」
と言っただけだった。
ベティは少し申し訳なく思ったが、ジェームズはさして気にする様子もなく、
「それにしても、どうして君はまだ列車に乗っていなかったんだい?」
と聞いてきた。
「あ、それは一緒にいた子の荷物乗せるの手伝ってて…あっ!」
赤毛の少女のことをすっかり忘れていた。
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