・短編H・

□お題『ゲーム』で3つのCP
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「ただいまー!ともー!」



「…うん、おかえり…」



「あんなー、今日体育やってなー、ダンスやってん!」



「…ほう…」



「したらもうダンスと言えば鞘師さんやん!」



「…へぇ…」



「もうあかりちょー感動っ……ってとも全然聞いてへんやろ!」



「んー…聞いてるよ…」



「じゃああかりなんて言うたか言ってみぃ!」



「…隣のクラスの鞘師さんのダンスが凄くて感動した…」



「おぉ…合ってる…」



うえむーのそんな聞き飽きた話はどうでもよくて、私は昨日買ったゲームを進めるのに必死なのだ。



「ともまたゲームやってるしー」



ぶつぶつ言いながらうえむーは着替え始める。
着替えるって実はおかしいのだ。
だってここは私の部屋。
うえむーの服なんてないんだから。



「んー…これでいっか」



そんな声と共にタンスから引っ張り出される私のスウェット。
それを横目に見てため息をつき、まぁいいやと思いながら画面を見直す。
と同時に左肩に衝撃。



「えっとー、ふぁいなる…ふぁんたじー?」



当然のようにうえむーが寄りかかってくる。
そして近くに置いてあるパッケージを手に取ってタイトルコール。
気にしない気にしない、と思うけど集中力は確実に削がれてる。
さっきから同じところをぐるぐるしてるのがその証拠だ。



「あー!そういえばなぁ、今日鞘師さんと喋れたんや!なんかなぁ…」



興味がなかったのか、パッケージはぽいっと放られる。
そして話の続き。
何を喋ってたのか聞かれても大丈夫なように、適当に、だけどしっかり聞き流す。
矛盾してるようだけど、話を全く聞いてないとこのお子様は拗ねるし、だからと言って真剣に聞くのもバカらしいし、仕方ないのだ。

そんなことを考えてるうちにうえむーは私の背中らへんに移動して、私が寄りかかってるベッドに乗る。
移動してるうえむーに対して、画面の中の私は立ち往生していた。



「とも、見てて!でんぐり返しする!」



いつの間にか『鞘師さん』の話は終わってて。
あ、聞いてなかったと思ってから、うえむーの言葉を脳内に受け入れる。

……ん?



「やっ、うえむー!でんぐり返しは危ない!」



コントローラーを置いて、急いで振り返る。



ゴンッ!



遅かった。
鈍い音が部屋に響く。
緩慢な動きで私の方を見るうえむー。
だんだん顔がくしゃーってなって、子供みたいに声をあげて泣き始めた。



「はいはい…おいで」



「どもぉ…!」



ベッドに乗ってうえむーを迎えるように手を広げる。
躊躇なく勢いよく飛び込んできたうえむーをよしよししながらまたため息。
ベッドの上で一回転して勢い余って頭をぶつけるとか、本当に中三のすることなんだろうか。
そう思いながら、こういうところが可愛いなぁなんて思ってしまうんだから末期なんだろうけど。



「めっちゃっ…ゴンッて…ゴンッて…!」



「うん、痛かったね」



ぶつけたであろうところを撫でてやる。
ひっくひっく言ってる腕の中のこの子は、私にぎゅっと必死にしがみついていて。


呆れることも多いけど、そこがなくなったらもしかして寂しいのかもしれないなと思った。



ふと見た画面の中の私は、画面に背中を向けていて、見てらんないわと言われたような気分になった。



end



FFやったことないので描写は適当ですすいません
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