・NOVEL(短編)・

□反則
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「みや!!」



放課後の廊下でみやの姿を見つけたあたしは、みやに向かって猛ダッシュ。



「・・・・・・。」



そんなあたしの声を聞いて、呆れながらみやは振り返ってくれた。



「みやぁ!!」



振り返ってくれたみやに飛びつく。
しかしスルリとかわされて、あたしのタックル、もとい抱擁は空を切った。



「ねぇ・・・『先輩』つけるの忘れてる。」



まだそんなことを言ってるみや。
『先輩』なんて初めて会った時から一回も使ったことがない。



「忘れてないよ!つけてないだけだもん!!」



満面の笑みでそう返すと、みやはため息をついた。



「まだ会って一週間なのによくそんな図々しくいられるね・・・。」



まぁ、一週間だけどさ・・・時間って関係ないじゃん?
あたしは初めから愛の大きさで勝負だし?



「いひひっ!みやだからだよ!なんてったって一目惚れですから!」



そう、中高一貫のこの学校。
あたしはもうすぐ高校生になるから、校舎が違う高等部の見学に行った。
そこでチラッと見かけたみやに一目惚れしたという訳なのだ。



「だから『先輩』・・・。」



「いいじゃん!みやも嗣永先輩のこと『先輩』って呼んでないし。」



相変わらず『先輩』をつけさせようとするみやに、みやの弱みを出す。



「あ、あれは・・・・・・もういい、勝手にして・・・。」



諦めて歩き出したみやの腕を取る。
そして可愛くお願い。



「一緒に帰っていい?」



「いやだ。」



可愛くお願いしたのにも関わらず即答するみや。
こっちを一回も見る間もなく即答しましたよ、この人・・・。



「なーんーでーよー!!」



「生意気な菅谷さんと一緒に帰る筋合いありませーん。」



みやは笑いながらそんなことを言う。
そのみやの言葉の中に引っかかる単語が・・・。



「あ!!また『菅谷さん』って言った!!ダメだよ!『梨沙子』って呼んでー!!」



そう、みやは未だにあたしのことを『菅谷さん』って呼ぶのだ。
なんでって聞くと「これが普通だよ」とか言って、まだ一回も名前を呼ばれたことがない。



「あはは!まぁとりあえず一緒には帰んないから、じゃあね〜。」



そう言って、みやはあたしの腕をほどいて手をひらひらさせながら小走りで高等部の下駄箱に向かった。

そして角を曲がろうとして止まった。
どうしたのかと思い声をかけようとしたが、それはこっちを振り返ったみやの言葉によって出来なくなった。



「またね、梨沙子!」



みやはいたずらっ子みたいな笑顔を残して、今度こそあたしの視界からいなくなった。

あたしは自分の顔が真っ赤になっていくのを自覚しながら呟く。



「反則・・・!」



end

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