・NOVEL(短編)・

□変身
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あたしの目の前に正座しているのは、℃-uteのリーダーであたしの恋人の舞美ちゃん。

なぜ正座しているのかっていうのは、あたしが怒ってるからなんだけど。



「なんで怒ってるかわかってる?」



舞美ちゃんに問いかけると、ビクビクしながら首を少し傾げた。


やっぱりわかってない。
というか、わかってないのに素直に正座してるんだ・・・。
その素直さに呆れる。



「心あたりもないの?」



次は申し訳なさげにコクコクと頷く。



「・・・バカ。」



困ったような顔をしてるけど知らない。
舞美ちゃんが悪いんだから。



さっきから一回も声を出してない舞美ちゃん。
そう、あたしが怒ってる訳はそこにある。



「・・・辛くなったら言ってって言ったじゃん。」



またやったのだ、この人は。



「一生声出なくなったらどうするの?」



声が出なくなるまで全力で。
前からたまにあったけど、今回のは一番ヒドい。

別に全力でやるのが悪いなんて言わない。
というか良いことだと思うし、来てくれたファンの方への礼儀だとも思う。

でもそのせいで一生を無駄にするなら、少しだけでいいから加減した方が良いに決まってる。



「困るのは舞美ちゃんだけじゃない、みんな困るんだよ?」



しょんぼりしてる舞美ちゃんにキツく言ってしまった罪悪感がわく。
でも喉に巻かれた包帯を見て、ここでキツく言っておかないとまたやるのだろうと心を鬼にした。

・・・まぁ、言ってもまたやるんだろうけど。



「・・・・・・あ゙、い゙、い゙。」



無理して声を出した舞美ちゃんに軽くでこぴん。



「声は出さない。」



舞美ちゃんの喉に人差し指をあてながら告げる。



「・・・ご、え゙、ん、え゙?」



それにも関わらず無理に声を出す舞美ちゃん。



「だからダメだっ「じ、ん、ば、い゙・・・ゴホゴホっ、・・・が、げ、で。」


あたしの言葉を遮って、また話し出す舞美ちゃん。



・・・そっか。
言うこと聞けないんだ?



舞美ちゃんの行動に、黒いあたしが大きくなりはじめた。



「・・・あ゙、い゙、り゙?」



黙ってしまったあたしに、舞美ちゃんが立ち上がって心配そうに声をかける。

舞美ちゃんがまた声を出したことによって、あたしは黒くなりきった。
俗に言う『黒愛理』に変身。



「・・・・声出しちゃダメって言ったよね?」



あたしより背が大きい舞美ちゃんを見上げながら、軽く微笑む。



「・・・!」



あたしの変身に気づいたのか、慌て始める舞美ちゃん。
それはそうだろう。
『黒愛理』に変身したあたしには、ヒドいめにしかあわされてないんだから。



「・・・っ!!」



あたしはそんな舞美ちゃんの頬に手を当て、深いキスをする。

だんだん力が抜けてきてる舞美ちゃんを支えながら、耳元で囁いた。



「今から絶対声出しちゃダメだよ、舞美。」



その言葉にビクッとした舞美にもう一度深く口づけてから、ゆっくりと押し倒した。



――さーて、今回は何回戦までもつかなぁ?



end

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