・短編D・

□寒い夜の待ちぼうけ
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冬の夜は寒い。

そんな寒い中で長時間人を待つなんてなんとも耐え難いことだ。

でも今ある人を待っているあたしは、寒さのせいではない問題を抱えていた。



「なんか、あったのかな・・・」



小さな呟きに続く白い息。

あたしが今待っている人は、なんの連絡もなく人を待たせるような人ではない。
ましてやもう約束の時間から1時間が経過している。

携帯は繋がらない。
相手からの連絡もない。



「うぅ・・・どうしよ・・・」



迎えに行ければいいのだけど、下手に動いてすれ違いになることは避けたい。



「・・・・・・もう少し待とう」



愛理は来る。
だって来るって言ったもん。
お願いだから、遅刻の理由はすっごく下らないことであってほしい。



「舞美ちゃんっ!!」



更に待つこと15分。
耳に届いた愛しい元気な声。
バッと顔をあげると、泣きそうな顔をした愛理がいた。



「あ・・・いり・・・」



「舞美ちゃんごめんっ!」



うまく出ない声とうまく動かない体。
ぽけーっと固まっていたあたしに愛理が抱きつく。



「あのねっ、電車乗ってたら人身事故で電車止まっちゃって、連絡しようと思ったんだけどなんかケータイ壊れちゃったみたいで繋がんなくてっ・・・!!」



「良かったぁ・・・!」



長々と説明してくれた愛理には悪いけど、理由なんてほとんど頭に入らなかった。
ただ、愛理が無事にここにいることが何よりも嬉しくて。

ぎゅーっと細い体を抱き締める。



「え・・・?」



「愛理泣かないでよ。あたし嬉しいよ?普通に愛理がここに来てくれて」



泣きそうな顔から泣いている顔になってた愛理。
そんな愛理の涙を指で拭って微笑む。



「なにかあったのかと思って心配しちゃったよ。なにもなくて良かった」



「舞美ちゃん・・・」



「ちょっと遅くなっちゃったけどご飯食べに行こう?早く食べて愛理帰さなきゃ!」



本当に寒くて本当に寂しくて本当に辛い時間だったけど、愛理が来たらそんなことすぐ忘れてしまった。

本当にそうだったからああ言ったのに。



「ばか」



「へっ?」



歩き出そうとするあたしの腕を引っ張る愛理。
そのまま愛理の腕の中に閉じ込められる。



「あ、愛理・・・?人見てるよ・・・?」



「舞美ちゃんは優しすぎだよ。こんなに体冷えてるのに、ずっとあたしが待たせちゃったのに」



「でも、愛理来てくれたから」



「そんなの釣り合ってないよ」



ちょっと怒った風な愛理。
どうしようか困っていると愛理がため息をついた。



「・・・・・・ごめん。あたし怒れる立場じゃなかった」



くっついていた体を離される。
申し訳なさそうに眉を下げてる愛理は嵌めていた手袋を外して両手であたしの頬を包んだ。



「ごめんね・・・」



愛理の体温に、愛理の声に、体と心が暖まってくる。
その心地よさに目を瞑ると唇に柔らかい感触。



「・・・・・・あ」



こんなに人いるのに。
・・・・・・暗いし人多いし逆にわからないか。

そう思ってお返しのキスをすると、愛理がいつものように微笑んだ。



「あたしの家、来ない?」



「愛理の家?それはいいけどご飯は?」



「あたし作るよ。待たせちゃったお詫びに。それに早く舞美ちゃん暖かいとこ連れていかないと風邪引いちゃう」



愛理がそれがいいって言うならいいか。
ここで大丈夫だーとか言っても愛理が気にしちゃうだろうし。



「うん、じゃあ行こっか」



手を繋ぐ。
愛理は笑ってぎゅっとしてくれた。

なんとなく、愛理のケータイを修理に出さないとだなーと思った。



end

州*´・ v ・)<本当にすごい寒かったでしょ?

从・ゥ・从<んー・・・・・・寒かったけど愛理来たら忘れた

州*´・ v ・)<でも寒かったんだよね?

从;・ゥ・从<え・・・あ、うん・・・まぁ、冬だからね

州*´・ v ・)<だよね、うん。じゃあご飯食べた後はたっくさん暖めてあげる

从;・ゥ・从<・・・・・・・・・なんか、嫌な予感が・・・するんだけど・・・

州*´・ v ・)<お詫びだよ、お詫び

从*・ゥ・从<うー・・・・・・



終わり

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