・短編D・
□変わらない好きな人
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「ぉー・・・」
「・・・・・・みや、そろそろ中入れば?」
「んー・・・・・・あと少しー・・・」
なにも考えていないような少し浮わついた様子のみや。
最初は反対の立場だったのに。
あたしが星を見るのに夢中になっていて、暇になったらしいみやが暇潰しにあたしの部屋に遊びに来た。
しばらく『中入ろーよー、寒いよー』等と騒いでたみやが途中から静かになっていて、あたしが中に入ろうかなと思った頃にはみやがキラキラした目で夜空を見上げていて。
・・・・・・まぁ、いいか。
昔からこういうことはよくあった。
最初はあたしが夢中になってたものに、いつのまにかみやが夢中になっている。
それは同じことに夢中になれる嬉しさがあったけど、いつも構ってくれるみやが構ってくれなくなるのが嫌だと思うこともあって。
だけど、いつも文句は言えなかった。
何よりもあたしは、なにかに夢中になってキラキラしてるみやが好きだから。
「風邪引くよ」
「あー・・・・・・引いても看病してくれるでしょー・・・」
「そういう問題じゃないんだけど」
「・・・・・・あぁ、寒いなら入ってていーよ?」
だから、そういう問題でもなくて。
呆れてため息が出る。
でもどうせあたしは最後まで付き合ってしまうんだろう。
それも昔から変わらないんだ。
「・・・・・・そろそろ、入ろっか」
会話が途切れて約30分後。
満足そうな笑顔を見せてみやがそう言った。
結局あたしは夜空を見上げるのに飽きて本を読んでいた訳だけど。
「満足したの?」
「うん、流れ星も見たし」
「え!?嘘っ!!」
「え、本当だよ」
信じられない。
この人ずっと無言だったんですけど。
幸せを恋人に分けてあげようとか思わないわけ?
衝撃の事実に口をポカーンと開けて固まっていると、みやが楽しそうに笑いながら話し出した。
「ちゃんと、梨沙子のこと願っといた」
「・・・・・・へ?」
「梨沙子の健康でしょー、梨沙子の勉強でしょー、梨沙子の運でしょー、あと・・・・・・梨沙子の幸せ」
へへっ、と悪戯っ子のように笑うみや。
その笑顔とその言葉に自然と顔が熱くなる。
「ん?梨沙子顔赤い。早く中入ろ」
そう言ってみやはあたしの手を取って部屋の中に入っていく。
引っ張られるまま付いていくと同時に、なんだか悔しくなる。
「・・・・・・自分のことは」
「あー、忘れてた」
「・・・・・・・・・ばか」
何も考えてない風に見えても、ちゃんとあたしを愛してくれてるんだって。
だからあたしは、どうしてもこの人以外を好きになれないんだ。
end