・短編D・

□たくさんの表情
1ページ/1ページ




「舞ちゃん」



コンサートが終わり着替えも終わって少し寛いでいると声をかけられた。
呼ばれた方向を見ると、不貞腐れたような顔。
だけど、そんな顔されるようなことをした覚えはない。



「なに?」



「あれ、やめてよ」



あれってなんだ。
愛理が嫌がるようなことしたっけと考えてみるけど思い付かない。



「あれってなに?」



「あの、その・・・えっと」



口ごもる愛理。
言いにくいことなのかな。

と思ったところで、愛理がライブ中にこんな顔をしてる時があったと思い付く。



「・・・・・・いいじゃん、あの話盛り上がるもん」



「っ・・・でもっ・・・!」



MCの時の自虐ネタ。
舞のそれはファンの人の反応が良いから最近定番になってきていた。

だけど愛理は嫌みたいで、なんだか少し泣きそうな顔をしていて。
思わず本音がポロっと溢れた。



「・・・・・・愛理が人気者なの、嫌なんだもん」



「・・・・・・そんなの・・・」



「いや、そうじゃなくて・・・なんていうか・・・・・・舞以外に取られちゃいそうで・・・」



嫌味とかじゃなくて。
愛理は舞の愛理なのに。
なのに、なんか、取られちゃいそうで。



「え・・・そういうことだったの?」



「・・・・・・うん・・・だから、その・・・うん、ごめん・・・」



・・・・・・恥ずかしい。
こんな子供みたいなこと言って飽きられても無理ないよね。



「なんだぁ」



そう思ってたのに、聞こえたきた声は予想外に柔らかいものだった。



「舞ちゃんに嫌われたかと思ったぁ・・・」



「そ、そんなわけないじゃん!」



「うん、だから良かった」



ふにゃーって聞こえてきそうな笑顔。
本当に安心してるのがわかる。
そしてその笑顔にちょっとの罪悪感も募る。



「・・・・・・減らす」



「うん?」



「あのネタ」



「・・・・・・止めてはくれないんだ」



「どうかなー?」



たぶん、止められないよ。

だって、あのネタはお客さんの反応良いんだもん。



だけどそれより、愛理の色んな表情を、舞は見たくて。



end

州#´・ v ・)<舞ちゃんのMC上手!!

(o・・)<それ怒ってるの?

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ