・短編D・

□鈍感なあなた
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舞美ちゃんが拗ねてる。

珍しい。



可愛い顔をプイッと背けてちょっと膨れっ面で。

でもそれは無自覚なのか、あたしが話しかけるといつもより少しぎこちないけれど話してくれる。



たぶん、自分が拗ねてるってことわかってないんだろうなぁ。



「・・・・・・可愛い」



そんな言葉が思わず漏れてしまう。
だってこんな鈍感な人、見たことない。
ていうか舞美ちゃんなら何してても可愛いんだけど。



「・・・・・・・・・なにが?」



ちょっと迷った末、あたしにそう聞いてくる舞美ちゃん。
こっちに向けられてる顔はやっぱり拗ねたもので笑ってしまった。



「え、な、なんで笑ってるの?」



舞美ちゃんはなにか勘違いして口まわりをゴシゴシと拭いている。
そんな舞美ちゃんにまた笑ってからあたしは口を開いた。



「なんでだと思う?」



「うー・・・・・・あたし変な顔してた・・・?」



「舞美ちゃんはいつも可愛いよ」



「そ、そんなことっ・・・」



照れてる舞美ちゃんも可愛い。
そんな風に思いながら、このままだと当たらないんだろうなぁと考える。

教えてあげてもいいけど、もうちょっとこの拗ね舞美ちゃんで遊びたい。



「あと一回チャンスあげる。当たらなかったら罰ゲームね」



「えっ!か、可愛いもの・・・・・・・・・えっと・・・ちっさー・・・?」



そう言って舞美ちゃんの5m後ろ、あたしから6m前でなっきぃと舞ちゃんと遊んでる千聖を指差す。
そしてその時の舞美ちゃんの表情で、今なぜ舞美ちゃんが拗ねているのかがわかった。
本当はそれを訊くのを罰ゲームにしようと思ってたんだけど。



「はずれー。じゃあ、罰ゲームだね」



素早く移動して舞美ちゃんの膝に座る。
うわっ、とか言いながら赤くなってる舞美ちゃんに微笑むと、慌てながらあたしを引きはなそうとする舞美ちゃん。



「あい、愛理っ、みんな見てるっ」



「見てないよ?ていうか舞美ちゃんからは見えないでしょ」



3人は本当に見てない。
自分達がはしゃいでるので気づいてないみたいだし、どうせ気づいてもいつもの通りイチャイチャしてるんだろーって思われるだけだ。
あたし的に特に問題ない。

舞美ちゃんは恥ずかしいみたいだけど、罰ゲームだもん。



「あ、さっきの正解はね、舞美ちゃんだよ」



「うぇっ?」



「舞美ちゃん、自分がヤキモチ妬いてたのわかってないでしょ?それが可愛かったの」



そう。
さっきわかったこと。
舞美ちゃんが千聖に妬いてること。
理由はたぶん最近二人のイベントとかやって、その分なんとなく近くにいることが多くなったからだろう。

まぁそんなことは正直どうでもいい。
千聖にそういう気持ちを抱いたことなんてないし、あたしは昔から舞美ちゃん一筋だから。



「・・・・・・妬いて、ないもん」



ぷくーっと頬を膨らませる舞美ちゃん。
拗ねたように俯いてた顔を上げたため、自然と上目使いになる。



「そうかな?」



「・・・・・・うん」



色々と我慢してそう問うと、小さくコクリと頷かれた。



・・・・・・あぁもう、可愛いな。



我慢なんて意味がなかった。

まだ拗ねてる表情の舞美ちゃんの頬に手を添えて口づける。

3人にバレるのは時間の問題だろう。
だけど、その時はどうか止めないでほしいと願うのだった。



end

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