・短編D・

□鞘師里保の楽屋レポート
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鞘師里保、13歳。
モーニング娘。9期メンバー。



モーニングの楽屋は今日も楽しいです。



まず、新垣さんと衣梨ちゃん。

二人は仲良しで、いや仲良しというか親子みたいな、姉妹みたいな、先生と子供みたいな。
見ていてとても微笑ましいです。
でもたまに、リーダーを独占してる衣梨ちゃんにちょっとヤキモチを妬いたりします。



「こら生田!だから話を聞けって言ってんでしょーが!!」



「痛い痛い!新垣さん痛いです!」



・・・・・・でも新垣さんのあのグリグリ攻撃はすごい痛そうなのでやられたくありません。



次は道重さんと田中さん。

二人は同期なので二人にしかわからないような空気だったりします。
先輩だからそれを不躾に聞くことも出来ないのでたまにもやもやしますが、楽しそうなのでこっちも楽しくなります。



「あ、りほりほー!」



道重さんが私が見てるのに気づいて手を振ってくれました。
頭をペコリとさげて返すと、隣にいた田中さんが意地悪そうに笑って道重さんに話しかけました。



「ほーら、さゆは気が多いけん。絵里はれなが貰うっちゃん」



「なっ、それとこれとは関係ないやろ!」



「早速絵里にメール送ろー。明日休みなんだけど空いてる?っと」



「ちょっと待て!さゆみも送る!送るから!」



なに言ってるかよくわからないけど、やっぱり二人は楽しそうです。
私も他の9期メンバーとあんな関係になれたらいいなぁ。



次は香音ちゃん。

香音ちゃんは一人で黙々とご飯を食べてます。
さっきまで二人で遊んでたんですが、お腹空いたーと言った後にちょっと集中して食べたいから、と言われてバイバイしました。
そうは言っても私たちの距離は3メートルもないのですが。
とりあえず幸せそうなので放っておこうと思います。



次ははるなんさんとダーイシさんとまーちゃん。

正直、まだなんと呼べばいいかわからなくてこう呼んだことはありません。
まーちゃん以外の二人は年上なので、接し方も難しいです。
でもこれは時間が解決してくれると思います。

そんな3人は、なんだか楽しそうに談笑しています。
まーちゃんがお絵描きをしてて、それをダーイシさんに見せて、褒めてもらってます。
なんだかお母さんと娘みたいです。
その様子を微笑ましく見守っているはるなんさんはお祖母ちゃんですかね。



そして、私の両隣にいる聖ちゃんとくどぅー。

二人はなんだか私を挟んでバチバチしています。
エッグ同士、なにかライバル心みたいなのがあるのかもしれないです。
私を挟まないでほしいなぁ、と思いますが何故だかそれは却下されます。
聖ちゃんは困ったように言うけど、くどぅーは怒ったように言うのでちょっと怖いです。



「ちょっと待った、怖いとか嘘でしょ。笑ってんじゃん」



「んふふ、バレた?」



「ていうかなにこの日記みたいなの。突っ込みどころありすぎて何も言えないんだけど」



「『モーニング娘。鞘師里保の楽屋レポート』だよ」



「可愛い・・・!」



二人に表紙を見せてあげると、くどぅーは呆れたような顔をして聖ちゃんは抱きついてきた。
困ったまま固まっているとくどぅーが聖ちゃんを怒ったふうに私から剥がす。



「やめろ」



「言葉使い悪いよ」



「うるさいお嬢様」



「口悪ヤンキー」



「・・・怒るぞ」



「もう怒ってるじゃん」



二人はやっぱり仲良しみたい。
楽しそうだなぁ。

ちょっと寂しくなって香音ちゃんを見たけど、まだご飯を食べていた。



「譜久村ー、ちょっといいかー?」



俯いたと同時に楽屋のドアが開いて聖ちゃんを呼ぶ声が聞こえてくる。
マネージャーさんだ。



「ほら、呼ばれてる。早く行ってくれば」



「うー・・・里保ちゃん気を付けてね!」



悔しそうにそう私に言い残してから去っていく聖ちゃん。
手を振って応えるとくどぅーにその手を握られた。



「?」



「なんかさ、ムカつく」



イライラしてるハスキーボイス。
それにちょっと笑って小さな声で言ってやる。



「大丈夫だよ、ちゃんと好きなのは遥ちゃんだけだから」



「・・・・・・そういうのがまたムカつく。それがわかってんのになんで聖とのことがわかんないかな」



イライラが収まらない様子の遥ちゃんにほっぺを両手でつねられる。
そのまま引っ張られて変な顔になるけど、あまり力を入れてないみたいで痛くはない。



「あひゃひゃひゃ」



「・・・まぬけ顔」



そう言って私のほっぺから手を離す遥ちゃん。
するとその後すぐに両ほっぺにちゅーされた。



「はるっ・・・く、くどぅー!」



「なに?」



思わず大きな声が出てしまいそうになって慌てて呼び方を変える。
『遥ちゃん』は二人だけの時の呼び方だから。

ってそれどころじゃない。
みんながいる前でちゅーされた。
ほっぺだけど、ちゅーには変わらない。



「な、なにって!ここっ、でっ!」



「知らない、やっしーが悪い」



なんにも気にしてないようなくどぅー。
おそるおそる周りを見ると、興奮している道重さんと恥ずかしそうなはるなんさんとタイミングよく(?)帰ってきていてぽかーんとしている聖ちゃんがいた。
他の人たちは見てなかったみたいだ。



「ちょ、ちょっと、もう一回・・・もう一回やって・・・!撮るから・・・!!」



「あ、み、見てないですよ!だから気にしないで続きを・・・」



「なにやってんのー!!聖の里保ちゃんに!!里保ちゃんも気を付けてって言ったじゃん!!」



三者三様の反応にどう返していいかわからなくてあわあわしてると、くどぅーに引き寄せられた。
それと同時に道重さんの方からパシャっと聞こえたのは気にしないようにしよう。



「聖のじゃないから、はるのだから」



頭の上の方から聞こえてくるハスキーボイスに、心臓がどくんと鳴る。

・・・・・・ってこれはもしかしてあんまり良くない展開なんじゃ・・・?



「えー!!里保ちゃんはあたしのなのにー!!」



・・・・・・香音ちゃん?



「9期の里保なんやけど!」



衣梨ちゃん・・・?



「ごめん工藤、さゆみもさすがにそれは譲れない」



道重さんまで。



「まぁちゃんも里保さん好きです」



・・・・・・たぶんこの子はよくわかってない。

だけど、くどぅーの宣言に張り合うように次々とそう言ってくるメンバー。



「リーダーとして鞘師独占はいただけないな。みんなで仲良くしなさい」



挙げ句の果てには新垣さんにもそう言われるくどぅー。
表情をうかがってみると呆けた顔をしていて、思わず笑ってしまった。



「な、なに笑ってんの!」



「私、くどぅーだけのものじゃないみたい」



今度は私がそう宣言する。

そんな予想外の宣言にくどぅーは怒ったように呆れたように、でも少し楽しそうにまた私のほっぺをつねった。



今日もモーニングの楽屋は楽しいです。



end

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