・短編D・

□妬かせる酔っぱらい
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「こんばんは、お届けものです。」



真夜中のチャイム。
恋人かと思って開けたドアの向こうには、その恋人に凭れかかられている黒い笑顔。



「・・・・・・桃子ちゃん。」



「みやが今日も酔い潰れちゃったんで先輩として責任を持ってお届けに参りましたぁ。」



うふふふ、と笑いながらそう言う桃子ちゃん。

いつもいつも雅を届けに来るのは桃子ちゃんだ。
二人で飲み会をしてるんじゃないかってくらい。



「いつも届けるだけなのにご苦労様。」



「えー?それって泊まってもいいってことですかぁ?」



「どうしたらそんな風に聞こえるんだろねぇ。アホなの?」



「亀井さんに言われたくないですぅ。」



笑顔の桃子ちゃんに膨れっ面の絵里。
この時点でなんだか負けてる気がしないでもないけど、雅だけは譲れない。



「あれぇ・・・ついたー?」



そんなピリピリとした空気の中、呑気な声が聞こえる。
絵里の恋人で、このピリピリの原因。



「着いたよ、大丈夫?」



「んー・・・ありがとー・・・。」



雅に優しく声をかける桃子ちゃん。
絵里と話してる時には見せない表情に、聞かせない声。
本当に雅を狙ってるんだと思うと急に心配になってきて急いで雅を引き取る。



「うぁ、っと・・・かめーさん?」



「ちょっと亀井さん、みやをそんな乱暴に扱わないでくださいよ。」



うるないな。
雅はあんたのじゃない。
絵里のなんだから。

そんな大人げない感情をグッと堪えて口を開く。



「届けてくれてありがと、じゃあね。」



そう言ってドアを閉めようとすると、慌てて身を乗り出す雅。



「ももっ、わざわざ家までありがと。」



「え、あ、うん!じゃあね。」



嬉しそうな桃子ちゃんを最後にドアが閉まる。
途端に雅がへろっとバランスを崩した。



「おっ・・・へへ、すいません・・・。」



ムカつく。
ヘラヘラしやがって。
雅のでも絵里のでもない匂いをつけやがって。

・・・・・・大人げないなんてわかってるもん。



「か、かめーさん・・・?」



雅の腕を引っ張って寝室まで行く。
なんにも言わないまま雅をベッドに放っぽって覆い被さった。



「雅が悪い。」



「うぇっ・・・?」



「すぐ酔い潰れるし、他の女の匂いつけてくるし、無自覚だし、いつの間にか桃子ちゃんにため口だし。」



絵里がヤキモチ妬きなの知ってるくせに。
絵里が妬くようなことばっかりするんだもん。



「ばか。」



そう呟いてから口づける。
お酒の味が口の中に広がってなんだかムカついたけど止めない。
珍しく雅の腕も絵里の背中に回ってるし止める理由がない。



「だから、反せ・・・・・・っておい。」



やけに素直なのはお酒のせいだと思ってた。
だけど検討違いだったらしい。

寝てやがる。
この背中に回った腕は、大方止めさせようと伸びてから途中で力尽きたとかそんななのだろう。



「なんだよ・・・雅のばか・・・。」



もう嫌いになってやる。
絵里をこんなに悲しませる雅なんて。



「だから・・・かめーさんが・・・いちばんすき・・・てさっきもいったじゃないですかぁ・・・。」



不意に聞こえてくるそんな言葉。
ななめだった絵里の機嫌が直ってくる。

・・・・・・・・・ってちょっと待った。
さっきも?



「いつ言った?」



「のんでるとき・・・・・・きいて・・・なかった・・・ですかぁ・・・」



それって飲んでる時に絵里が一緒にいるって思ってたってこと?
しかも絵里に言ったと思ってるってことは・・・・・・。



「雅・・・・・・あんた絵里と桃子ちゃん間違えて言ったんじゃないの?」



既に寝ている雅。
聞こえてないのはわかってるけど訊かずにはいられなかった。



「本当ばか。」



例え酔ってたとしても恋人を他の誰かと間違うなんて許してやらないんだから。

と思いながらも、言われた内容はすごく嬉しくて。
それこそ不機嫌満開だった絵里がにやけるくらいで。



「しょーがない、だきょー案だ。」



最近覚えた言葉を使ってから雅のシャツのボタンを2つほど外す。

明日の朝が楽しみだなぁ、と思いながら絵里は数えきれないくらいの痕を雅に付けるのだった。



end



ノノl;∂_∂'ル<うわっ、なんだこれ!

ノノ*^ー^)<(こんくらいで許してあげる絵里やさしー)

ノノl;∂_∂'ル<びょ、病気!?

ノノ#^ー^)<おいこら、絵里の愛情だよ

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