・短編D・

□変えられない年の差
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いつも好きになるのは年上で。

絶対あたしより一歩前に行っていて。

自分の気持ちを伝えられないままみんな離れて行っちゃうんだ。






「さむーい!」



一人きりだったはずの屋上に突如響いた高い声。
いろいろな意味を含めたため息をついてから、あたしはその声の発信源を見る。



「・・・・・・なにしてんの。」



呆れた声でそう言うと発信源はニコニコしながらあたしの隣に座った。



「そりゃあ、みやもここにいるならわかるでしょ。」



「だからなんで受験生がサボってんだって訊いてんの。」



「息抜きって大切だよ?それにみやに会いたかったし。」



「・・・・・・あっそ。」



嗣永桃子。
ムカつくけどあたしの好きな人で、例のごとくあたしより年上だ。
受験生のくせに頻繁に屋上にやってくる変な人。

・・・・・・・・・期待しちゃうから止めろって思うけど。



「あれ?嬉しくない?」



「ぜんっぜん。早く受験に集中すれば?」



可愛くない言い方。
自分でもそう思うけど恋に臆病になっているあたしはこういう言い方しかできない。



「うーん・・・・・・実はちょっと集中できない理由があってねー、聞いてくれる?」



「・・・・・・どうせあたしがなんて言っても話すんでしょ。」



「おぉー、よくわかってるねぇ!」



あたしがどんな態度とっても気にしてないようなもも。
まるであたしの本心が全部わかってるような振舞いに動揺しないと言えば嘘になる。
だけど、それを隠す方法はそれなりに身に付けていて。



「で、なに。」



「あのねー・・・・・・もも、好きな人いるんだ。」



だけど。



「その人が気になっちゃってなかなか集中できないんだよね。」



こんなことを言われたら動揺を隠せるはずがない。
思考が完全に止まり頭が真っ白になる。



「そう、なんだ・・・。」



喉の奥が乾いて上手く話せない。

あぁ、あたしはまた失恋するみたいだ。



「その人ね、絶対もものこと好きだと思うんだ。でもすっごく鈍感でどんなにアタックしてもももがその子のこと好きなの気づいてくれなくて、もう告白するしかないんじゃないかなーって。」



聞きたくない。
聞きたくないのにももの言葉は止まらない。

普通の状態では耐えきれそうになくて拳を握りしめて唇をきつく噛む。



「だから、するね。」



「え・・・?」



案外近くで聞こえた声に、自然と俯いていた顔があがる。
握りしめていた拳を包み込まれて目の前にはももの顔。
きつく噛んでいた唇には柔らかいモノが触れた。



「好きだよ、みや。」



「え・・・え、なに・・・どういう・・・?」



「・・・・・・鈍感。」



いや、鈍感とかそーゆー問題じゃなくて。

開こうと思った唇は再び塞がれる。
今度はさっきみたいな可愛いものではなくて。

噛みつかれるようにキスをされて、ぼけーっとしてる間にももの舌が侵入してきた。
びっくりして自分の舌で押し返そうとすると逆にもっと絡めとられてしまう。



「っ・・・ふぁ・・・!」



そのまま後ろに押し倒される。
余った勢いであたしがゴツンと頭をぶつけると慌ててももが離れた。



「あ、あぶな・・・。」



あたしに馬乗りになったまま手の甲で唇を抑えてそう言うもも。
なんか言わなきゃと口を開こうとしたけど、その前に腕をグイっと引っ張られて体を起こされる。



「ちょっと、もっと抵抗してくれると思ってた・・・・・・予想外に抵抗されなくて止まんなくなるとこだったよ・・・。」



危ない危ない、と繰り返しながら少し距離をとるもも。

ちょっと、待って。
あと少しで思考が追い付きそうだから。



「えっと、まぁ一応、告白の返事聞かせてくれる?」



「・・・・・・・・・人のこと勝手に襲って・・・・・・」



「あ、ごめんね。みやってば一向に気づいてくれないし言ってくれそうにないし。」



・・・・・・ムカつく。

さっきよりは離れてるももの顔はニヤニヤと笑っている。
それになんとか仕返しをしたくて、ちょっと離れていたももにグイっと近づいて今度はあたしがキスをした。



「っ!・・・・・・それ、誘ってる?」



耳元で声がする。
さっきの行動も合わせて恥ずかしくて仕方ないあたしは、その質問には答えずにとりあえず言いたいことを言うことに。



「あ、あのさっ・・・あたし年下だけど・・・置いてかないで、ね・・・。」



ギュっと目を瞑ってそう言うけどももからの反応がなかなか返ってこない。
不安になっておそるおそる顔をあげると、そこには顔をほんのり赤く染まらせたもも。



「な、なにこの可愛い子・・・!」



「はぁ・・・?」



「もうダメ、我慢出来ないって。」



なに言ってるんだ、と突っ込む暇はなかった。
さっきと同じように押し倒されて上からももに見下ろされる。



「置いてかないよ、ももは。」



そんな状況だったけど、そう言ったももはすごく優しく微笑んでいた。
それになんだかすごく安心して。



「好き・・・・・・これ、返事・・・。」



素直にそんな返事ができた。



end

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