・短編D・

□一人でも進める未来
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今日こそ、この想いを届ける。
どんな困難だって乗り越えれるはず。

だって憂佳には、応援してくれる素敵な仲間がついてるんだから。



―――――――――――――



夏恒例、ハロープロジェクト全員が集まるハロコン。
なんと幸運なことに、今回の楽屋はモベキマス全員部屋だ。

・・・・・・不運と言ってしまえば不運だけど、幸運ということにしておこう。


そんな全員部屋の中、憂佳を中心に一角に集まるスマイレージ。
見据える先にはこっちと同じように、矢島さん中心に一角に集まっている℃-uteさん。



「憂佳!今日こそ!」



隣にいる花音が張り切っている。
後ろをちょっと振り返ると、あやちょと紗季ちゃんがしっかり頷いていた。

こんな頼もしい仲間がいるんだ、きっと大丈夫。

自分に言い聞かせて歩き出す。
℃-uteさんの矢島さん以外のメンバーが臨戦体勢に入った。



「憂佳どうした?なんか用でもある?」



最初に仕掛けてきたのは岡井さん。
一見人懐っこい笑みを浮かべているが、目の奥が笑っていない。
普段は優しくて面白い岡井さんだけど、矢島さんのこととなると途端に変わるのだ。



「あ、えと・・・」



「岡井さーん!紗季面白い遊び見つけたんで一緒にやりましょーよぉ!!」



どう対応すべきか戸惑っていたところで、紗季ちゃんがヘルプに来てくれた。
岡井さんの腕を引っ張って違うところに走っていった。
矢島さんのことが大好きな岡井さんだけど、紗季ちゃんのことも妹のように可愛がっているため無理矢理断ることは出来ないのだろう。
悔しそうな顔をしながらもちょっとにやけながら連れられていた。



「ゆーうかっ!なに、誰に用?」



「うちのリーダーに手出すつもりじゃないよね?」



少し安心した憂佳に、今度は萩原さんと中島さんが仕掛けてきた。
憂佳に飛び付きながら無邪気を装ってる萩原さんだけどやっぱり目の奥は笑ってない。
中島さんに至っては敵意剥き出しだ。

・・・・・・・・・一応言っておくけれど、普段は本当に仲良くしてもらってる。
ただ、矢島さんが絡んだ時にだけ℃-uteさんは異常なほど敵対してくるのだ。



「うっ・・・。」



「中島さん舞ちゃん新曲のPV見ましたよちょっとすごくたーくさんじっっっくりお話したいんでちょっとあっちのテレビあるとこまで付き合ってくださいよぉ!!」



中島さんに図星をつかれて怯んだところに、今度は花音のヘルプが入った。
隙をつく暇もないほど一方的に言いたいことを言った花音は、隙をつく暇もないほど一方的に二人の腕を掴んで一気に走り出した。

・・・・・・・・・花音自身の欲望が垣間見えてたけどそこは触れないでおこう。

なんにせよ手強い先輩二人をいっぺんに相手してくれた花音に感謝。



ここからが本当の勝負だ。

一番手強い人が残っていて、多分それはあやちょでは太刀打ちできない人で。



「一気に少なくなっちゃったね、ゆうかりん。」



いつも通り余裕たっぷりな声。
そして余裕たっぷりな笑顔。

最大の敵、鈴木さん。



「そうですね・・・。」



「頼もしい仲間がいて良いね。こっちは三人とも押しきられちゃった。」



ふふっ、と楽しそうに笑う鈴木さんはやっぱり余裕綽々で。
だけど少しだけ寂しそうな表情を含んでいた。



「愛理ー、和田ちゃんが美術館でお土産買ってきてくれたんだって。絵好きでしょ?ちょっと来てよ。」



もうダメかと思ってたたずんているところに飛んできた声は菅谷さんのものだった。



「えっ?ちょ、ちょっとりーちゃんっ!」



「はいはい、行くよー。」



有無を言わさず鈴木さんの手を引っ張っていく菅谷さん。
ボケーっと見つめていると菅谷さんと目が合って、鈴木さんに見えないようにウィンクをされた。
その後にひょこひょこ着いてったあやちょもピースを置いて離れていった。



目の前にはようやく一人の矢島さん。



「あれ?みんなどこ行ったんだろ?」



「矢島さん・・・」



「憂佳ちゃん!あたしいつの間にか一人になってたよー、あはは!」



陽気に笑ってる矢島さんを見てから、各所に散らばった℃-uteさんとスマイレージのメンバーを見る。

スマイレージのメンバーは目を輝かせながらエールを送ってたけど、℃-uteさん達はみんなさっきの鈴木さんみたいな寂しそうな顔をしてた。



「・・・・・・・・・だめだ。」



「えっ?」



憂佳はちゃんと自分で頑張ったかな?
メンバーに頼りきって、自分だけだったらすぐ諦めてたんじゃないかな?

℃-uteさんはみんな自分自身の力で、昔から大好きだった矢島さんを守りたくて精一杯だったのに。
憂佳はメンバーに頼ってばっかりで。



こんなんで想いなんか伝えちゃだめだ。



「えーっと、憂佳ちゃん?大丈夫?」



目の前で振られる大きな手。
それにハッとして笑顔を作る。

自分の力で、距離を縮めよう。
矢島さん以外の℃-uteさんに『この子なら仕方ない』と思わせられるように。
矢島さんに『この子と一緒に過ごしたい』と思われるように。



「大丈夫です!」



だから今日は、メンバーの力で矢島さんと二人きりになった今日は、このチャンスは使わないで騒いじゃおう。



「あのっ、みんなでゲームしませんか?」



「みんな?ゲーム?」



「はい!」



メンバーの方を向いて手招きする。
不思議そうな顔をしながら近づいてくるスマイレージのメンバーと、ちょっと呆れたように笑いながら近づいてくる℃-uteさん。



「舞のお姉ちゃんなんだからねっ!」



「くっそー!さきちぃにつられた・・・。」



「リーダーは譲らないんだから!」



「・・・・・・ちょっと見直した。」



各自ポンっとスキンシップ取ってから矢島さんのところに集まってくる。
言ってることは敵対するようなことだけど、みんな優しい笑顔だった。



「憂佳どうしたの?」



「せっかく二人きりだったのにぃ!!」



「ううん、みんな手伝ってくれたのにごめんね。今度はちゃんと憂佳の力で頑張ろうと思って。」



あやちょはわかってたみたいで、ちょっと離れてにこにこしてた。
花音と紗季ちゃんはあんまりわかってなかったみたいだけど、℃-uteさんに呼ばれて行ってしまった。



「憂佳ちゃん、なにするの?」



℃-uteさんとスマイレージ、全員集まって輪になる。
そこで矢島さんからの質問。

正直なにも考えてなかった。

どうしようかと考えていると、憂佳の後ろの方から大人数な声が聞こえてきた。



「「「「「「「王様ゲーム!!」」」」」」」



「うわぁっ!!」



驚いて振り返ると、そこにはベリーズさん達が。
あっ、と思って菅谷さんを見ると悪戯っ子のように笑っていて。



『ありがとうございます』



憂佳が口パクでそう言うと、もう一度笑ってから既に王様ゲームの方向で事が進んでる憂佳と菅谷さん以外のベリーズさん℃-uteさんスマイレージの方へ行ってしまった。



周りの人に支えられるというのは、とても素敵でありがたいことだと思う。
だけどそれだけじゃダメなんだ。
支えられてるだけじゃ頑張ってることにならない。
自分の力で、自分だけでも立っていられるようにしなくちゃ。



そう心に決めて輪の中に飛び込む。



憂佳の未来は、憂佳の手の中に。



end

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