・短編B・

□恋人の考え
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舞美って、何考えてるのかわからない。

危ないとかそういうんじゃなくて・・・・・・・・・なんだろ。



何も考えてないみたいで、本当は深く考えてたりしてるように見えて本当に考えてない、みたいな。

まぁ、とりあえずよくわかんない。

恋人のももが言ってるんだから本当だ。





久しぶりに舞美がももの家に泊まりに来た。
最近はももが舞美の家に行くことが多かったから。

先に風呂に入ったももは、自分の部屋でストレッチ中。



「はぁー、気持ち良かった!」



舞美がお風呂から出てきたらしい。
ドアをバーンと開けると、短い髪をバスタオルでガシガシと拭きながらこっちに来る。
その格好はキャミソール一枚に膝下までのズボンという薄着。

一応、今冬なんだけど。



「・・・・・・ねぇ。」



そのまま、もものベッドに腰掛けて落ち着いてる舞美。
思わず声をかけた。



「んー?」



「髪、ドライヤーで乾かさないの?」



いくら短いからって、乾かさないと傷む。
もも達はアイドルなんだから、そこらへんはちゃんとしないと。
それにバカみたいな薄着だから、乾かさなかったせいで風邪ひかれても困るし。



「ももがやってよ。」



ニコニコしながら舞美が言った。
ももは呆れてため息をつく。



「そんくらい自分でやんなよ。」



「えー!やってくれないの?」



本当に驚いた反応をする舞美。

なんでももがそんなことをしなくちゃならないんだ。

それに、風呂上がりのこんな色っぽい舞美に無闇に近づきたくない。
こんなのすぐに理性を失うに決まってるのだから。

そう思ってストレッチを続けてると舞美から問題発言。



「うー・・・・・・愛理ならやってくれるのにぃ・・・・・・。」



・・・・・・・・・ちょっと待った。
何よ、それ。

ムッとして舞美を見ると、ドライヤーを手に取って乾かそうとしていた。



「貸して。」



素早く舞美に近づき、ドライヤーを奪い取る。
そしてなんも言われないうちに電源を入れて、舞美の髪を乾かし始めた。



・・・・・・・・・やっぱやめとけば良かった。



まず、風呂上がりの舞美の髪の毛から漂ってくるシャンプーの匂い。
それに、冬にも関わらず露出度が高い格好。

そして、愛理がこんな舞美の姿をホテル等で見てるんだという事実。

これらがももの理性を刺激してくる。



「・・・・・・・・・はい、終わり!」



ドライヤーを止める。
なんとか保ってる理性で、舞美から離れようとする。



でも、それは出来なかった。



「・・・・・・なに。」



舞美に掴まれた腕が熱くなってくる。
そんなももには気づかないで舞美が近づいてきた。



「もも、良い匂いする!」



ももの首あたりをクンクン嗅いでる舞美。

ももも風呂上がりなんだから当たり前だ、とか言いたかったけど、もう限界だった。


舞美の腕をガシッと掴んで、遠心力を利用してベッドに投げる。



運動神経良いんだから、こんくらいで怪我しないでしょ。



「うわっ!」



予想通り、ちゃんと受け身を取ってベッドに寝転んでくれた舞美。

さすがだね、ももも舞美も。



「あのさぁ、」



舞美の上に覆い被さって呆れながら言う。



「もものこと誘いすぎ。」



耳元で囁くとビクッとする舞美。
投げられたことで若干放心状態だったらしい。

まぁ、そんなの関係ないけど。



「え・・・・・・ちょっ、ちが・・・・・・もも・・・・・・!!」



さっきまでのニコニコ顔はどこへやら。
思いっきり余裕の無い顔になっている。



「・・・・・・可愛い。」



こうやって、舞美の抵抗を押し切るのはいつものこと。

こういうきっかけを作るのが舞美なのも、これまたいつものことだ。



でも、そんな舞美の行動がわざとなのか、それとも本当に何も考えてないのかは直前の反応を見ないとわからない。



今回は何も考えてなかったっぽいけど。

ごめんね、勘違いして。



けど、何考えてるかわかんない舞美のせいだからしょうがない。



まぁ何考えてても、ももの思い通りになるのは変わんない。


そう思いながら、心の中でいただきますをした。



end

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