・短編B・

□意地悪な質問
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学校一の人気者。
それが誰かと聞かれたら、誰しもが彼女の名前を言うだろう。



矢島舞美。



だってこの学校で矢島舞美を知らない人なんていないんだから。

文武両道。
美人端麗。
そして性格も完璧。
可愛くて格好良くて優しくて天然。



そんな矢島舞美に興味がないなんて言う人は、かなりのひねくれ者だと思う。



まぁ、そう言ってるあたしもかなりのひねくれ者なんだけど。



そして今、新聞部のあたしは矢島舞美を探してる。
その訳は、全校生徒からの質問を矢島舞美に答えてもらって、それを学校新聞の記事にしようと思ってるからだ。

矢島舞美について聞きたいことはたくさんあるらしい。

それを絞ったのがこちら。



「聞きたいこと@・・・・・・性格は作ってないのか。A・・・・・・それが本当の性格なら、疲れないのか。B・・・・・・恋人はいるのか。」



わー。
面白そうだけど、最後以外は意地悪な質問。
てか最後に至っては、みんなの欲望が見え隠れしてないかい?

だけど聞いてみたいよね。
学校一の人気者の本当の性格やら何やら。

そんなのみんな聞けないって言うから、あたしが聞いてあげるってこと。



ということで、矢島舞美の教室へゴー。

3年2組だね。



「・・・・・・・・・あれ。」



教室を覗くと、そこにはみんなに囲まれてお弁当を食べる矢島舞美の姿・・・・・・・・・は無かった。

クラスは間違えてないはず。
だって彼女は隣のクラスだから。



「もも〜!舞美は?」



しょうがないからももに居場所を聞く。

小指をたてながらも、ももは適当に答えてくれた。



「舞美?昼休み始まってから見てないよ。」



・・・・・・・・・ホンマでっか。
どこにいるんだ矢島。

とりあえず早く探さないと昼休みが終わっちゃう。
後日に持ち越しとか面倒くさいし。



そう思いながら早足でいろんな場所を探す。

見つからない。
本当にどこにいるんですか矢島さん。



「うわぁっ!」



「わっ・・・!」



特に何も考えないで角を曲がると、良い匂いの物体に衝突。
そしてお互いに尻餅。



「わわっ!えりっ、大丈夫?」



自分も盛大に転んでおきながら、すぐさま他人の心配をする。
しかも本当に申し訳なさそうな顔で。

まぁ、もちろん矢島舞美でした。



「ごめんねっ?ちょっとボーっとしてたっ。」



「舞美、あたしは良いから自分のスカート直して。」



パンツが見えそうなくらい乱れてるのに、気にしないで他人の心配ですか。

・・・・・・・・・さては色仕掛けだな。

梅さんにそんなのっ、そんなものっ・・・・・・効きますけど何か?

舞美の太ももがエロくて鼻血出そうになりましたけどハハハ。



「あぁああっ!!・・・・・・・・・見た?」



顔を真っ赤にしながら心配そうに聞いてくる舞美。
何それめっちゃ可愛い。



「バッチリ。さくらんぼの「えぇぇええりっ!だめっ、言っちゃ!」



うん、からかわれた時の反応も可愛い。



閑話休題。



ということで2人で裏庭へ向かう。
人は少ない、周りからも見えない、良し。



「なんでここ来たの?」



あたしの真正面に舞美を立たせる。
距離はまぁ、2mくらいでいいだろう。

よし。
不思議そうにしてる舞美は放っといて、あたしは本題に入ろうと思います。



「新聞部梅田のー・・・・・・クエッションたーいむっ!!」



あたしのいきなりの上げモードにビクッとする舞美。
そんな反応も可愛い。



「今回はなに?」



「全校生徒かーらーのっ、質問です。」



「ははっ!うん。」



あたしの言い方が可笑しいらしい。
楽しそうに笑いながら返事をする舞美。



「質問@!その性格は作ってますか?」



「へっ?性格?」



そのキーワードにしばらくポカーンとしてから、舞美はテレたように話し出す。



「確かにしっかり者に見えるように頑張ってるなぁ。ほら、えりも知ってる通り本当はあんまりしっかりしてないからさ。」



・・・・・・・・・はい、この人作ってません。
だってしっかり者に思われてると思ってますよ?

あなたのしっかりしてないところなんて、あたしに限らずみんな知ってます。

ということで、質問@の答えは『作ってない』でオッケーね。



「では質問A!その性格で疲れない?」



作ってないってことがわかったんで、そのまま質問Aに進みまーす。

・・・・・・・・・うん、これはあたしも興味あるね。



「疲れる・・・・・・?なんで?」



「ほら、舞美って完璧じゃん。それに弱音とか吐かないし、あんま人頼んないし。だから疲れないかって。」



眉を八の字にして、首を傾げる舞美。
それからちょっと考えた後、思いついたようにハッとして話し出した。



「確かにガーッと走った後は疲れるね!」



あー・・・・・・うん、もういーや。
シロです、この人。
質問Aの答えは『疲れ知らず』です。



てことで、最後の質問だね。



・・・・・・・・・ええ、あたしってばひねくれ者なんで。



「じゃあ最後の質問行きまーす。質問B!恋人はいますか?」



「えっ?」



ふふふ・・・・・・。
さてさて、舞美はどんな反応をしてくれるのかな?



「どーしたの?早く答えてよ。」



「だ、だって!それ、学校新聞に載るんでしょ・・・・・・?」



舞美は顔を少し赤くしながら聞いてくる。

はは、慌ててる慌ててる。



「そりゃそーよ。一字一句漏らさずに載っけますとも。はい、早く答える。」



「え、えりぃ・・・。」



くっ・・・。
そんな甘い声出して泣きそうな可愛い顔してもダメよっ!
ちゃんと恥ずかしそうに答えて貰えるまで、梅田、諦めません。



「・・・・・・えり?」



あ、降参です。
ヤバいです、可愛いですこの人。



「嘘。舞美、おいで?」


ペンを閉まって腕を広げる。
可愛い舞美がちょこちょこと歩いてきて、あたしの腕の中にすっぽりと収まった。



えぇ、舞美は恋人いますよ?
はい、それはあたしですけど?



「・・・・・・・・・えりの意地悪。」



「ふふふ、舞美が可愛いからイジメたくなっちゃった。」



あたしの腕に収まる可愛い恋人。
その人は学校一の人気者。

あたしはただの新聞部。
そして正しい情報を売りにしている情報屋。



そんな情報屋と人気者の恋を、学校新聞に晒す気はさらさらない。



end

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