・短編B・
□バカは死んでも治らない
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意外と幼いな。
自分の膝を枕にして眠る恋人を見て思う。
普段は高校生になんて見えないくせに、こういう時は年相応だ。
疲れていたんだろう。
突然娘。の楽屋に入ってきた雅は絵里以外の人に軽く挨拶してから、何も言わないままでソファーに座っていた絵里の膝で眠り始めたのだ。
「カメ相手だとこんな顔すんのね。」
絵里の後ろから聞こえる聞き慣れた声。
「ガキさん。」
「雅ちゃん、あたしの前ではいつも緊張してるから。」
ガキさんはそう言って優しく笑う。
愛故に後輩に厳しいガキさん。
怖いと言われてるけど、本当はこんな優しいのだ。
「雅は人見知りですからねぇ。」
今度遊んでみれば?と、雅の髪をすきながらガキさんに言ってみる。
すると、ガキさんはなんか悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「いいの?カメから取っちゃうかもよ?」
「・・・・・・・・・ダメ。」
雅のことは信用してるけど、そんなことを言われるとなんか不安だ。
ガキさん無駄に自信に満ち溢れてるし。
「嘘嘘。そんなことしませーん。」
「・・・・・・・・・できませんよ。雅落とすのに絵里がどれだけ時間かけたと思ってんですか。」
「はいはい。じゃああたし帰るから。」
ガキさんは笑いながら、膨れっ面になった絵里の頭をくしゃっと撫でて帰っていった。
「・・・・・・・・・ガキさんのばかぁ。」
「かめーさんのがバカですよ・・・・・・。」
ガキさんに向かって恨めしそうに呟くと、下から寝ぼけたような声。
そっちに目を向けると、雅が眠そうに目を開けていた。
「起きてたの?」
「・・・・・・・・・起きたんです。」
不機嫌そうに言いながら、雅は絵里の頬に手を伸ばしてくる。
なんだ、今日はデレなのかな?
そんなことを考えてると、伸ばされた手に頬をつままれた。
「いひゃい!いひゃい!いひゃいっ!!」
「かめーさんのばーか・・・・・・。」
雅はそう言って手を離す。
すると、素早く少しだけ上半身を浮かせて絵里にキスをしてきた。
「えっ、今!雅っ!!」
「なんもしてないなんもしてないなんもしてない。」
絵里が嬉しそうな声をあげると、相当恥ずかしそうに絵里のお腹の方に顔を向ける雅。
当然のようにその耳は真っ赤だ。
なんだこれ、襲っていいってことなのかな。
そう勝手に結論づけてみた。
そうするとなれば、体勢を変えなくちゃ。
「よいしょっと。」
「はっ?ちょっ、何してんですかっ!!」
雅の体を勝手に動かして、絵里が押し倒してるような格好にする。
慌てて雅が抵抗し始めるけど、時すでに遅しってやつ。
「だって雅が誘うから。」
「誘ってなっ・・・・・・!!」
なんか色々うるさい雅の口をふさぐ。
さっき雅がしたようなキスなんかで済ませる気はない。
とことんイジメてやるぞー。
「ストーップっ!!!!」
そんな声が聞こえたと思ったら、いきなり体を後ろに引っ張られた。
思わず仰向けに倒れると、そこには呆れた様子の親友。
「なんだよさゆー、いいとこだったのにぃ・・・・・・。」
「楽屋なんかでいいとこ作んないで。」
そう言ってため息をつくさゆ。
なんか苦労人だなぁ。
絵里のせいだけど。
「雅!ちゃんと抵抗せんと!!」
もう一人の親友の声が聞こえてくる。
雅の方に目を向けると、必死な顔で説得しているれいなの姿。
でも、当の雅はその場面を見られたことで更に顔が赤くなってる。
れいな・・・・・・雅のことを思うなら、ほっといてあげてください。
「もう早く帰りなよ。」
「うん、そーする。」
「もう楽屋でいちゃつかないでね。」
「うへへ〜。」
ちゃんと返事しなさいと怒鳴るさゆをスルーして、絵里は雅の元に向かう。
未だにれいなが絡んでいて、ちょっとじぇらしー。
「今度絵里に襲われそうになったられなに「れいな邪魔ー。」
頬に空気を入れてれいなを軽く押す。
「邪魔じゃないけん!絵里が「絵里たちもう帰るのー。れいなは「うるさいっちゃ!絵里が無理矢理しとー「れいなのがうるさいし。それに絵里は無理矢理なんて、・・・・・・」
いつものようにくだらない言い争いをして、れいなともバイバイする。
そしてやっと雅の元へ。
「帰ろ。」
「・・・・・・・・・はい。」
人前でキスしたのと、ほったらかしにしたのでちょっといじけてる雅。
そんな雅が可愛くて、思わずおでこにキス。
「さっきの続きは帰ってからしよ?」
そう耳元で囁く。
すると雅は顔を赤くしながら、また『かめーさんのバカ』と呟いた。
end