・短編B・

□止まらない時間
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あの子は今、何してるんだろう。



ふと思った。

最近会ってない。
電話やメールは毎日してる。

でも、なんかそう思ったのだ。



本当は寂しがりで甘えん坊なあのリーダーは、今何してるんだろう。



そう思った瞬間にケータイが震え出す。
マナーモード切るの忘れてたか。

・・・・・・じゃなくて。

ケータイを開くと、『矢島舞美』の文字。



『・・・・・・もしもし、えり?』



「そーだよ。」



あたしのケータイにかけたんだからあたしが出るのは当たり前でしょ、なんてことは言わない。

だって、この舞美は『不安』な時の舞美。

そういう時に茶化しちゃうと、言いたいこと言えない子だから。



『・・・・・・なんかね、会いたい。』



これは一種のテレパシーなのかもしれない。

あたしたちは、切れない絆と絶えない愛で繋がってるから。

・・・・・・・・・クサいこと言いすぎたかな。



「あたしもそう思ってた。」



笑いながら言うと、なぜだか口ごもってる舞美。
なになに、まだなんか言いたいことが?



『って思ってたら、えりの家の前まで来ちゃってたんだけどっ、めいわ』



舞美が突然話すのをやめたんじゃない。
あたしが切ったのだ。

そんでダッシュ。
ダッシュしてダッシュしてダッシュして、玄関を飛び出した。



「えりっ!」



そこには、泣きそうな顔のマイハニー。



見た瞬間ちょっと笑っちゃったけど、バレないようにすぐ抱きしめる。

肩からはグスッグスッと鼻をすする音。



いい年したアイドルが、なにをこんな道端で泣いてるのか。

って思ったけど、いい年した元アイドル現モデルもちょっと泣きそう。



だって今、舞美の匂いでいっぱい。

舞美の感触も。
舞美の泣いてる声も。

どーしてこんなに愛しいんだろ。



「えりぃ・・・。」



「よしよし。」



ちゃんと顔を見るために少し体を離す。



・・・・・・・・・可愛い。

いやいやいや。
だって涙目で上目遣いされたら可愛いとしか言いようがないじゃない。



「えり?」



舞美に名前を呼ばれて正気に戻る。
てか会ってから名前しか呼ばれてない気がするんだけど。



「舞美、どしたの。」



頭を撫でてあげながらそう聞く。
あたしのその行為に嬉しそうな顔をしてから、舞美は口を開いた。



「えりに会いたかった。」



・・・・・・ずきゅーん。
え、なにこの生物。
可愛すぎやしないかい?



「なんか色々考えてたんだけど、えりが抱きしめてくれたからスッキリした!」



うん、ただ不安だったのね。
仕事のストレスやらあたしに最近会ってないやらで。
・・・・・・・・・え?自惚れじゃないよ?



「そっか。そういえば最近会ってなかったね。」



「うん、だからなんか変な感じだったのかも。」



「変な感じ?」



「なんか心がスースーした。」



眉を八の字に下げながらそう言う舞美。

舞美の中のあたしの存在が大きくて、すごい嬉しくなる。
だって少し会えないだけで、舞美の心をこんなに動かせちゃう。



「寂しかったんだね。あたしもだけど。」



また舞美の頭を撫でて笑った。

そしたら舞美が不満そうな顔をして、無表情になって、近づいてきて・・・・・・って待った!!



「・・・・・・ばか。」



急いで舞美の肩を掴むと、拗ねたような表情な舞美。

違う違う。
キスが嫌なんじゃなくて。



「バカは舞美。ちゅーはあたしからするもんなの。」



そう言ってあたしは舞美に口付けた。

・・・・・・・・・やっぱり舞美好きだなぁ。

なんだろ、触れたとこ全部から愛しさが込み上げてくる。



唇を離して、舞美と目を合わせた。

なんか無性に可笑しくなってきて、二人して大笑い。

この幸せな空間がたまらなく好きだ。

℃-uteにいた時は毎日がこんな感じだったのに。



柄にもなく、このまま時間が止まってしまえばいいのにと思った。



end

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