・短編G・

□神様からのプレゼント?
1ページ/1ページ




今日のみやは、なーんか勘が良かった。



――――――



地方の仕事でホテルにお泊まり。
みやとももが同じ部屋になって、やることと言ったら一つだ。

と、ももは思ってるんだけど。

相方はそうでもないらしい。

でもたぶん本当に嫌だと思ってるわけじゃないと予想して、素直になってもらうために、ももはこういう如何わしい薬に手を出したわけです。
今までの経験上、最終的にいつも許してくれるし大丈夫なはず。



ということで、みやがお風呂に入ってるうちにおしゃれなグラスを用意して、その中にオレンジジュース(媚薬入り)を入れました。
後はみやがお風呂から出てきてこれを飲んでくれれば完了。
甘くて熱い夜になるのです。



「あー喉乾いた」



ナイスタイミング!
まるで小説のようなばっちしタイミングで相方登場しました!

にやける頬を抑えて、グラスを片手にみやの前に躍り出る。



「はい!」



「え、なに…」



「みやが喉を乾かせて出てくるだろうなぁって思って、オレンジジュース用意してたんだよぉ」



はいおっけー。
これで完璧。
この後みやは戸惑いながらもお礼を言ってこれを飲むに違いない。



「……いらない」



と、ここでいきなりのイレギュラー。
慌てて切り返す。



「えっ、喉乾いたって言ってたよね?飲もうよ、こんな目の前にちょうどいい飲み物があるよ?飲まないともったいないって!ほら!」



ぐいっとみやの目の前に持っていったはいいけど、なんだろうなこの胸騒ぎ。
なんとなく嫌な予感がするんだ。
でも、今さら引き下がれない。
ももの意地にかけて。



「……そんなもったいないと思うなら自分で飲めばいいじゃん」



差し出されていた飲み物を、みやはももの方へ突き返した。
いや、それだけではない。
めんどくさそうにわざわざももの口の辺りまで持っていってグラスを傾けたのだ。

反射的に開く口。
流れ込む液体。
的中した嫌な予感。



「はいお疲れ様です」



グラスの中身を全部飲んだことを確認して、みやは冷蔵庫に向かう。
自分がどれだけ大変なことをしたのかわかってないようだ。
そりゃ、当たり前だけど。



「っ…!」



体が熱くなってくるのが感じられる。
グラスを乱暴に机の上に置いて、足早にベッドに向かい潜り込む。



「やばいやばいやばいやばい…」



どうすればいい。
どうすればいい。
なんにも浮かばない。
思考力は落ちていくばかり。



「もも?しょげてんの?」



なんにもわかってないおバカさんから発される呑気な声。
普通のジュース飲んでもらえないだけでこんなしょげる21歳がいるかって話。
もっと深読みしてよ。
もっとちゃんと考えてよ。

そして、この状況を打開してよ。



「ねぇ……もも?」



みやがももの背中からぐいっと顔を覗き込んでくる気配が感じられる。
目が開けられない。
開けてしまったら、どうにかなってしまう。



「おーい」



ぺしっと軽く、頬をはたかれる。
いつものじゃれる程度のもの。
でも、それでもそれは、今のももには刺激が強すぎた。



「っ…!」



「もも…?」



「んっ!」



ようやく異変に気づいたのか、ももの肩を掴んで方向転換をさせるみや。
そんな強引な行動に、声が漏れてしまう。
どこを触られたって、やばい。
これは本当に、どうすれば。



「……なんだろ」



「っ、え?」



変な熱さにやられてるももの頭でも、なんとなくみやの雰囲気が変わったのがわかった。
いつもと少し違う。
なんだろって、こっちがなんだろ、だよ。



「なんか、なんとなく、わかっちゃった」



まだしっとりしてる髪の毛をガシガシして、ちょっと照れたような顔して。
みやは、今日のみやは、やっぱり。



「んで、いつものももの気持ちも、ちょっとわかっちゃった」



布団をはがれて、上に乗られる。
ももの荒い呼吸で、みやが上下する。
そして覆い被さられ、軽く唇にキスを落とされて、耳元にそれを寄せられる。



「…こりゃ堪んないわ」



切羽詰まったようにそう言ったみやに思い出すのは、今とは逆の、いつもの状況。
少しのことでも反応して、息を荒げてて、体温が熱くて、目を潤ませてて。

ももが、自分にすがりついて可愛く鳴いてるみやに抱く感情を、おそらくみやは覚えた。



「じゃ…今度からっ…ちょっとあまっ…く、みてよね…!」



知られてしまったならもういい。
みやの首に腕を回す。
ぐいっと抱き寄せてそう告げると、みやはなにも言わなかった。
その代わり手は服の中に侵入して、唇は首筋を這う。

たったこれだけのことなのに、刺激が強すぎる。



「んあっ…!みや…!」



触れてほしいところには触れてくれないみやの手。
焦れる。
足りない、足りないよ。
そんなんじゃ。



「ねっ、早くっ…もっと、強くっ…!」



「…いつもの仕返し、したかったのに」



いつもって。
なんだっけ。
あぁ、いつも、焦らしちゃうっけ。
ごめんね、こんなんなんだね。
こんな、余裕がないものなんだね。



「そんなん言われたら焦らせないっつの…」



ももも最初はそうだったよ。
あぁ、そっか、みやは今がその最初なんだ。
みやにしてもらうことはあるけど、それだっていつもももは余裕だもんね。
こんなこと、あるとは思ってなかった。

どれもこれも、今日のみやが。



今日のみやが、なーんか勘が良かったせいだ。



「みやっ…もうっ…!」



「ん、いくよ…!」



「あっ…もっ…んぁっ…!んんーっ…!!」



それはもしかして、神様の悪戯、いや、神様からのプレゼントだったのかもしれない。

お互いの気持ちを知る機会を作るという。

もう、そうだとしか思えない。
だって、みやがあんなに鋭いなんておかしすぎる。
絶対そうだ。



「なんか失礼なこと考えてるな…」



ほらやっぱり。
普段のみやがこんな鋭いわけない。
この夜が終わったら元に戻るに違いない。
それは安心。

安心、するけど。



「ねぇ…みや?」



「ん…」



「まだ、足りない」



「なっ…!!」



ちょっと、勿体ない気がするから。
今日はとことん逆の立場を楽しもうかなって。



「どうなっても知らないから…」



「どうされてもいいよ」



ただ。



ももがやられっぱなしでいると思わないでね?



譲るのは今日だけ。



みやが神様からのプレゼントを持ってる今日だけ。



今日、みやにされたことは微塵も忘れずに覚えておくから。



次回、覚悟しててね。



end



ノノl;∂_∂'ル<悪寒しかしない…

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ