・二次版権A・

□昼下がりの図書室
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「あれ、氷室さんじゃないですか〜。」



わざとらしいしゃべり方で話しかけてくる奴。
私にこんな絡み方をするのは一人しかいない。



「何の用?祈さん。」



精一杯毒々しい言い方で告げる。



「何の用って、ここ図書室ですよ?読書以外にありませんけど。」



・・・・・しまった。
最近無駄に絡んでくるから、すっかり私に用があるのかと思っていた。



「・・・・・じゃあ早く読書しに行きなさいよ。」



自分の勘違いに少し腹がたって、更に言い方が毒々しくなる。



「ふふ、氷室さんって意外に可愛いですよねぇ。」



・・・・・・は?
今の会話のどこからそんな話題になるのだろうか。



「だって今、私が氷室さんには用が無いって言ったから怒ったんですよね?」



ポカーンとしてる私に、ニコニコしながらどんどん勝手なことを言ってくる祈さん。



「それって、本にヤキモチですか?」



意味が分からない・・・。
なんでこの私が祈さん関係でヤキモチを妬かなければならないのか。
それにヤキモチの相手は本?
冗談じゃないわ。



「あなたっ「つまり、氷室さんは私のこと好きなんですよ。」



ずっとニコニコしてた祈さんが急に真面目な顔になる。

なぜか知らないけど私は、その表情と言葉に胸をギュッと締め付けられた。



「まぁ、次会った時に自分から言ってくださいね!」



そう言って、固まってる私を残して祈さんは図書室から出ていった。



「そんなの・・・ありえないわ・・・。」



少し考えてからあることに気付く。

そう、祈さんはここで本も読まなかったし借りもしなかった。



――結局、私に用があったんじゃない。



変なところで素直じゃなかった祈さんの姿を思い浮かべて、苦笑が漏れる。



次に会うのが楽しみね。


end

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