・二次版権A・

□『一番』
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他の人からいっぱい貰ってるのなんて知ってるわよ。

でも・・・それでも、私があげたものを『特別』だと思ってほしいから。

貰った中で一番だって言ってほしいから。

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「はい。」



「・・・どーも。」



玲の部屋に入ってすぐに例のものを渡す。
反応は予想通り。
ブスッとした顔でお礼。

私から貰ったのを困ってる訳じゃないとわかっていても、少しショックだ。


そんな玲の周りには・・・チョコチョコチョコ。
そんな状況も予想通りで、小さくため息が出る。



「・・・なんでお前がため息つくんだよ。」



不満そうな顔で言ってくる玲。
貰った時にブスッとしてたくせに、私のチョコを開けてもう食べ始めてる。



「さぁね。玲がいっぱい貰ってるからじゃない?」



言い方が冷たくなっちゃうのは仕方ない。
自分らしくないと思い、ふざけようとしたが玲のせいでそんな気分はなくなった。



「なんだそれ。あたしの恋人じゃあるめーし。」



・・・なんてデリカシーのないやつなんだろう。
そんなのわかってるわよ。
・・・あぁ。
そうですよねー、玲は鈍感ですものねー。
しかも私のチョコはもう食べ終わってるし。
絶対ちゃんと味わってない。

いろいろ腹が立ってきて、何も言わないでドアに向かう。



「おいっ、どこ行くんだよっ!!」



「どこって・・・自分の部屋に決まってるじゃない。」



そう言って部屋から出ようとする。



「ちょ、待て!!」



「・・・何?」



なんで呼び止めるんだろう?
そんな疑問は次の瞬間、宇宙の果てまで飛んでいった。



「・・・や、食うの手伝ってくんねぇ?」



バタン!!

ドアを勢いよく閉めて、自分の部屋に戻る。

・・・私が手作りしたのは玲のだけだ。

そんなことは絶対気付かないだろう刃友の姿を思い浮かべて、今度は大きくため息をついた。



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今年はちゃんと言おうと思ってた。
『うまかった。ありがとう。』って。

でも、あたしはついいつもみたいな反応をしてしまって。


言えないだけで、本当は紗枝のが一番だって毎年思ってる。

今年は、思ってるだけを卒業する。

あたしは紗枝の部屋に向かった。

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end

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