・短編C・

□恋の呪縛
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「・・・・・・・・・もものこと、好きなんだ。」



そんなみやの言葉にももは頭が真っ白になる。



『放課後・・・・・・あー、5時くらいに教室来て。』



いつも通り一緒に朝登校したみやにそう言われた時、さすがに違和感は感じた。
だってわざわざそんな時間まで残ってる意味がわかんないし、しかもそれまで一緒に過ごす訳じゃなくてその時間に来いってことだから。
文句を言おうとしたけど、いつの間にかみやは歩き出してて何も言えなくて。

その後は、特に違和感も感じないで過ごしてたからそんなに重要なことじゃないんだろうなぁと勝手に思っていたのだ。



「・・・・・・ちょ、ちょっと待って。用はそれなの?」



柄にもなく慌てるもも。
でもこれは仕方ない。



『あたし、みやのこと・・・・・・好きになっちゃった・・・。』



みやと幼なじみのももは、昔からみやが好きだった。
だけど、この間こんな相談をされてしまったのだ。

ももの友達・・・・・・いや、親友の佐紀ちゃんに。
佐紀ちゃんを裏切ることなんて、ももには出来ない。



「うん、前から好きだった。・・・・・・・・・なかなか言い出せなかったけど。」



真っ直ぐももを見つめて真剣な表情のみや。
そんなみやを見て、もう覚悟を決めて告白してることがわかる。

ももはみやが好き。
・・・・・・・・・でもオッケーは出せない。

その事実がどうしようもなく悔しくて、なんで告白なんてしたんだと意味のわからない怒りを覚えた。



「・・・・・・・・・付き合えない。」



「え?」



「付き合えないよ!バカっ!!」



口から出たその言葉と同時に溢れてくる涙。
その涙は、今までみやを想って流した涙より数段想いがこもっていて。

いきなり泣き出したももに混乱したみやが、慌ててももを抱きしめた。
だけど、溢れる涙と想いは止まらない。



「も、もも?どうしたの?」



「ばかぁっ・・・・・・もっ、と・・・タイミング・・・!かんっ・・・がえてっ・・・!!」



「た、タイミングって?なに?どーゆーこと?」



みやが状況を把握出来ないのも無理はない。
ももだったら意味わからなすぎて怒ってるかもしれないし。

だけどみやは違った。

ももが落ち着くまで、ずっと抱きしめながらポンポンと背中を叩いてくれて。



・・・・・・・・・・・・諦めかけてたのに。



「・・・・・・・・・でも、付き合えないよぉ・・・。」



「あたしのこと、好きじゃない?」



「好きだよっ・・・!!みやが好きだよ・・・。」



好きじゃないわけないんだ。
ももは昔からずっと一途だったんだもん。
みやがどうしようもなく好きで・・・・・・・・・・・・もっと早く伝えていればよかったのに。
相談なんかされる前に。



「・・・・・・・・・なんで付き合えないのかはわかんないけどさ、あたしがもものこと守るよ。何があっても守る。・・・・・・・・・だから、ちゃんとももの気持ちで返事してよ。」



みやの真面目な表情が夕日に照らされる。
一瞬佐紀ちゃんのことも忘れて、付き合おうと思ったが慌てて思い出した。

でも、それでも、佐紀ちゃんを裏切ろうとしてるももがいる。



「・・・・・・守るなんて、無責任なこと・・・言わないでよ・・・・・・。」



やっとそんな言葉を絞り出せた。
でも予想以上に鋭くなったその言葉に、みやの様子を窺ってみる。

すると、みやはまだ返事を待ってるような表情だった。



――ちゃんとももの気持ちで返事してよ



さっきみやから聞いた言葉。
みやは、この返事を待ってるんだ。
他の状況なんかより、ももの気持ちが大事だと。

そう思うと、もう周りのことなんて考えられなくなった。

後のことなんて考えないで、ももは口を開いた。



「・・・・・・・・・・・・好き、みやが好き。」



end

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