・短編C・

□結局許しちゃう
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「しりとりしよう。」



「はぁ?」



あたしのいきなりの提案にみやが驚いて声をあげる。

楽屋での待機時間。
特にすることもなく暇だから、何かしようと思ったのだ。



「だから、しりとり。」



「なんでしりとり?」



・・・・・・・・・・・・特に意味はない。
他に何も思いつかなかったけど、みやとはなにかしてたかったから。

そうなると、しりとりかなぁって。



「まぁいいじゃん。お題決めてやろ!」



「別にいーけど・・・。お題決めてよ。」



「じゃあ・・・・・・・・・相手の好きなところ。」



あたしにお題決めさせるなんてみやも学習しないなぁ。

案の定慌て始めたみやだけど、変えてあげるつもりはない。



「それは嫌!他のにしようよ。」



「みやが決めてって言ったんじゃん。」



あたしの正論に黙るみや。
ちょっと拗ねたようにあたしを睨んでから、また口を開いた。



「・・・・・・・・・・・・じゃあすぐ終わらせるから。」



それは困る。
いっぱい聞きたいもん。



「負けたら罰ゲームね。今ここで負けた方からキス。」



これなら大丈夫かな。
ここにはメンバーがいるし、みやは絶対負けたくないはずだ。



「・・・・・・・・・せめて、相手に対して思ってることにしてよ。」



んー・・・まぁ、そんくらい妥協してあげてもいいか。



「それも含めてならいいよ。じゃあ始めるね。『可愛い』」



ということで開始。

さーて、どんなのが聞けるかなぁ。



「い・・・・・・『色っぽい』」



「『いじめたくなる表情』」



みやの好きなところならいくらでも出る。
早速赤くなってる顔に笑ってから、あたしはみやを急かした。



「う・・・う・・・『歌が上手』」



『ず』・・・か。
わざと難しい言い方したな。
みやのくせに頭使っちゃって。



「『ずば抜けたエロさ』」



「なっ、なにそれ!」



「みやの好きなところだけど。」



我ながらよく思いついたものだ。

自分で自分に感心しながら、みやの言葉を待つ。



「さー・・・・・・『最悪』」



・・・・・・・・・ちょっと待ってよ。
それは、恋人と『相手に対して思ってること』ってお題でしりとりしてる時に出る言葉?
少なからずショックなんだけど。

まぁ、みやがその気ならあたしにも考えがある。



「『首筋が弱い』」



「ちょっ・・・!そういうのは無し!」



「始まる前に言わないと無効だもーん。」



みやが悪いんだ。
『最悪』なんて言うから。



「・・・・・・・・・『妹』」



・・・・・・・・・・・・バカ。
あたしがその言葉に敏感なの知っててそんなこと言うんだ。

みやの『妹みたい』って言葉に何度傷ついたか。



「・・・・・・・・・もう止めた。」



拗ねてやる。
みやと反対側を向いてそう言うと、ちょっと焦ってるような雰囲気を感じた。

もっと焦っちゃえばいい。



「ご、ごめんって・・・・・・。嘘だから。」



「知らない。」



今日はもう許してあげないもん。

そう思って膨れていると、なにやら頬に柔らかい感触。
有り得ないと思いながらもみやを見てみると、両手で顔を覆っていた。
隠し切れていない耳は真っ赤にして。



「・・・・・・・・・・・・みや、あたしの負けだね。」



「いっ、今ので許っ・・・・・・んっ・・・!」



今ので許したのは、さっきのことだけ。
もともと『負けた方がキスする』ってルールなんだから、許してもらうのはあたしの立場だし。



「ストーップ!!」



いきなり響いたキャプテンの声に驚いて振り返る。
そこにはメンバー全員がこっちに注目してる姿が。



・・・・・・・・・・・・・・・あぁ、やらかした。



いや、多分キャプテンとかももとか茉麻は気づいてたと思う。
だけどみやと付き合ってることは公表してなかった訳で。



「・・・・・・・・・てへ!」



精一杯のブリッコをして誤魔化そうとするけど、熊井ちゃんが顔を真っ赤にしてることとか千奈美がポカーンと口を開けているのは変わらない。
キャプテンは怒ったように身体を震わせてるし、ももは呆れた感じだし、茉麻はニヤニヤしてるし。



さて、どう逃げようか。



「えーっと・・・・・・みやの唇にジャムが着い「そんなんで誤魔化せるか。」



キャプテンの鋭いツッコミには勝てなかった。

2人して楽屋の隅に正座させられて、撮影が始まるまでこっぴどく怒られた。
それでもみやと一緒だったらそんなに苦じゃなかったり。



・・・・・・・・・・・・まぁ、みやはメンバーにキスを見られてからずっと放心状態だったんだけどね。



end

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