・短編C・

□あたししか見られない
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屋上にいるのは、あたしだけの可愛い不良。





――バチンッ



「いっ・・・・・・つー・・・。」



屋上に入った瞬間に目に入ったのは、タバコを吸ってるみや。
何にも言わずに近づいて、慌ててタバコを隠そうとしたみやの頬を思いっきり叩いた。



「・・・・・・・・・約束、したよね。」



もう吸わないって。

約束してから、まだ一週間も経ってない。
あたしが怒るのも無理ないじゃないか。



「・・・・・・・・・ごめん。」



申し訳なさそうに俯いてるみや。
でも、そんなんじゃあたしの怒りは収まらない。

ちゃんとした理由が無いと。



「なんで?」



「吸わないと落ち着かなくて・・・・・・。」



・・・・・・・・・本当に意志が弱いんだから。
恋人との約束くらい守ってほしい。

まぁ・・・・・・常識的なこともわからないなら、約束も守れないか。



「落ち着かないから、嗣永先輩とキスしたの?」



「なっ・・・!」



なんで知ってるのかって表情。
あたしの情報網をナメてもらっちゃ困る。

いや、本当はみやだから噂がすぐ出回るんだけど。



「あれはっ!ももが勝手にっ・・・・・・あたしの、意志じゃない・・・・・・。」



つまり、押し切られたってことね。

本当の本当に意志が弱い。
だから、よく何考えてるかわからないって言われるんだよ。



「みやって口寂しいの?」



「・・・・・・っ!ちがっ・・・!」



タバコ吸うし。
吸ってない時は飴舐めてるし。
あたし以外の人ともキスするし。



「それならさ、ずっとあたしとキスしてればいいんじゃない?」



みやが反論する前に口を塞ぐ。
最初は触れるだけだったけど、だんだんと深いものに。

・・・・・・・・・やっぱり苦い。



「・・・・・・っ、ん・・・ふぁ・・・!」



みやの体から力が抜けて、あたしにもたれかかって来た。

毎日のように喧嘩して、毎日のように授業サボってて、先生でも手が付けられないみやが、あたしの前ではこんなんになる。



こんな情けない姿、誰にも見せられないね。



すがりついてくるみやの髪を撫でながらキスはやめない。

みやの瞳から流れる生理的な涙を見て、あたしは綺麗に微笑んだ。



end

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