・短編C・

□Lonely girl's night
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短い髪が、風になびいた。



「ふー・・・。」



仕事が早く終わった時は、毎晩のようにジョギングをする。
それは、えりがいなくなってからついた癖のようなもの。

何にも考えたくないのかもしれない。



それなのに、この公園でいつも休憩するのはどうしてなんだろう。



「本当は、考えたい・・・・・・の、かな・・・・・・。」



いつも思い出すのは、えりの良いところばかり。
そんなところ、もう思い出したくないのに。

もう、嫌いになりたいのに。



「・・・・・・・・・まーいみ。」



後ろから突然聞こえた声に、勢いよく振り返る。

・・・・・・・・・なんで・・・・・・なんで、会いに来るの?

そこにいたのは、見間違えるはずない・・・・・・えりだった。



「えり・・・・・・。」



「寒くないの?」



ベンチに座ってたあたしの隣に座るえり。
変わらない笑顔で優しく話しかけてくる。

しかも、薄着のあたしを見て自分のマフラーをかけようとしてくるし。



「・・・・・・・・・寒くない。走ってたから。」



マフラーを押し返す。
それでも、えりはあたしの首にマフラーを巻いた。



「冷えちゃうよ。」



「・・・・・・冷えないもん。」



「髪短いし。」



「・・・・・・短くない。」



・・・・・・・・・子供みたい。

自分でもそう思うけど、えりの優しさに素直に応えるなんて出来ない。

だって、あたし達の関係は終わったんでしょ?



「じゃあ、帰ろう。」



「えりは帰ればいいじゃん。」



「・・・・・・・・・舞美のお母さんに言われたの。心配してるよ?」



そう言って、あたしの頭をポンポンと叩くえり。


その感触が、昔と同じままで。
なんか、変わらなすぎて。



・・・・・・・・・もう、なんにもわかんないよ。



「帰・・・っ、・・・てよ・・・!」



「舞美・・・?」



溢れてくる涙を抑えることなんか出来ない。

もう終わったんなら、あたしに会いに来ないで。
あたしに優しくしないで。



そんなの、ズルいよ。
変わらないままなんて、ズルすぎるよ。


耳の中に大きく響いたのは、あたしの涙が頬を流れる音。



end

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