・短編C・

□ぁまのじゃく
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君のことなんて、興味ない。






「憂佳ー、今週の日曜遊びに行かない?」



生徒会の仕事を2人でこなしている時、花音がいきなりそう言ってくる。
その言葉に、憂佳の鼓動が一回大きく鳴った。



「・・・・・・・・・予定、あるかも。」



嘘。
予定なんかない。
それでもこんなこと言っちゃうのは、花音がこれからも一緒だと信じてるから。

いや、信じたいから。



「えー!どうしても?お願い!」



「・・・・・・・・・・・・どうしてもって言うなら・・・・・・いいけど。」



「やった!どこ行こっかー。」



そして、やっぱり承諾してしまうのは、これからは一緒じゃないことがわかってるから。

素直になれないのは、元からだ。



「遊園地とかどう?」



「・・・・・・・・・別にいいよ。」



返事が遅れるのは生徒会の仕事をしてるからか。
それとも、憂佳は乗り気じゃないんだと花音に思わせたいからか。



「あー、楽しみだなぁ。」



そう言って伸びをする花音。
花音の分の仕事は終わったらしい。



「花音、先に帰っていいよ。こっちはまだ結構残ってるから。」



「何言ってんの?ほら、半分貸して。」



書類を半ば無理矢理取られる。

・・・・・・・・・そんな優しさ、もう要らないよ。
いつも優しくて、最後まで優しくされたら、勘違いしちゃうに決まってるじゃん。



『花音ちゃん引っ越すんだって。』



たまたま聞こえたクラスメートの会話。
それは信じられないもので。

たとえ生徒会で一緒なだけだからって、教えてくれないなんてヒドいよ。

そう思ったけど、所詮そんなもんだと言い聞かせたのだ。



それでも納得していない自分がいるなんて、憂佳はそれこそ納得していない。

だって、憂佳は花音になんて興味ないもん。



「とびっきりのオシャレしてきてね。」



「え?」



「日曜日。髪型はさ、こないだあたしが褒めたやつで。」



そう言って、いきなり憂佳の髪の毛をくしゃっと撫でる花音。
そんな花音の表情がどこか寂しげで。
なんか別れを宣言されてるみたいに感じて。

今まで憂佳が我慢してきたものが溢れてきた。



「・・・・・・うっ・・・く・・・!」



「ゆ、憂佳?どうしたの?」



これは、嘘泣きだ。
憂佳が花音のために泣くわけない。

だって、憂佳は・・・・・・。



「知・・・らっ、ない・・・!花音、な・・・んて・・・!」



「・・・・・・・・・ごめんね。」



花音が何に対して謝ってるのかはわからなかった。

でも、花音が優しく抱きしめてきて。
涙は更に溢れてきて。

嘘泣きの方が嘘なんだ、と思い知らされた。



end

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