・短編C・

□アンブレラ
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「くだらなっ!!」



親友のそんな言葉に絵里はムッとした。
さゆにとってはくだらなくても、絵里たちにとっては重要なのだ。



「チャンネル争奪戦で喧嘩とか姉妹喧嘩やん。」



「・・・・・・違うもん。」



ちゃんと恋人だ。
・・・・・・あんまそう見られないけど。



「てかそれで家出とか雅ちゃんも子供だよね。」



「そーだよ!雅が子供過ぎるの!!」



最近同棲を始めたばかりだと言うのに、もう家出されてしまったのだ。
身を乗り出しながらそう言うと、絵里を見て溜め息をつくさゆ。



「で、それが一昨日の話でもう寂しいと。」



「・・・・・・・・・そーです。」



どうやって仲直りしようか、さゆに相談しようとファミレスに呼び出したのだ。
素直に謝れないのが絵里だから。



「雅ちゃんの仕事帰りに迎えに行けばいいじゃん。今日仕事なんでしょ?」



「だぁかぁらぁ!それで迎えに行ってなんて言えばいーのっ!」



「謝ればいいんでしょ。」



だからそれが無理なんだってば!
無言でそう訴えかけると、さゆがまた溜め息をついて話し出した。



「あ、じゃあ傘持ってけば?」



「雨降ってないのに傘なんて持ってったらアホみたいじゃん・・・。」



「今日夕方から雨降るらしいけど。」



ケータイをいじりながらさらっとそう言うさゆ。
天気予報が書いてある画面を見せてくれた。
そこにはしっかりと傘マークがついていて。



「よし!それだよさゆみん!!」



俄然やる気になった絵里。
すると、そんな絵里を見てまたもやさゆが問題発言をした。



「まぁ、雅ちゃんが傘持ってたら意味ないけどね。」



・・・・・・・・・そーじゃん。

そう思ってガックリうなだれた絵里を見て笑ってるさゆは、多分最初からこの問題に気付いてただろう。

・・・・・・・・・なんだかさゆがリアルに小悪魔に見えた。



「絵里、ケータイ鳴ってる。」



「・・・・・・・・・いませんって言っといて。」



今は電話に出てる場合じゃないんだ。
1日会えないだけでこんなに壊れそうになっちゃうんだから、早く仲直りの方法見つけなきゃ。



「おっけー。もしもし、雅ちゃん?絵里今いな「ちょちょちょちょい!!待った!代わる代わる!!」



急いでさゆからケータイを奪う。
相手が雅なら話は別だ。
恐る恐るケータイを耳に当てると、いつもより不機嫌そうな声が聞こえてきた。



「・・・・・・今日そっち帰ります。傘忘れたんで。」



「あ、うん・・・。」



雅の実家より、絵里たちの家の方が今日の仕事場に近いのだろう。
良いタイミングで知れたことに喜びながらも、雅にそれを悟られないように可愛くない反応をする絵里。



「・・・・・・まぁ、じゃ、そーゆーことなんで。」



「・・・・・・じゃーね。」



お互い微妙な雰囲気になりながら通話を終える。
切った途端にガッツポーズした絵里を見て、さゆが苦笑したのがわかった。



「なにその演技。」



「こーゆー態度だったら、迎えに来るなんて思わないでしょ?思わぬサプライズで仲直りするの!」



ウキウキしながらそう告げる絵里を見て、さゆはまたもや苦笑した。



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