短編集
□親しき仲に礼儀あり
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二人はきっと、あとたった一歩を踏み出すことができないだけだと思う。
それが怖いからなのか、それとも旅人同士だからなのか。
前に一回だけ僕は、キノに聞いてみた、シズさんのこと好きなのかと
「好きだよ」
あっさりと言い切った。けれどその気持ちは確かだと、長年の付き合いなだけはある僕にはよくわかった
いつからなのか、どこに惹かれたのかとかは今は聞かないほうがいいかもしれないと思い、その時は僕が「へー。」と言って会話は終わったけど。
その後王子様にも言うと、質問の答えははぐらかされたけれど、とてもわかりやすい反応だったなあ。
そんな二人は今現在、僕を挟んで会話している。王子様の方が年上で男なのに、なんだかかっこわるい会話だ
「シズさん、この国をでたらしばらくは次の国にはつかないので食料を買うのはわかりますよ、けど果物をこんなに買ったって腐るだけです。」
「でもキノさんはいっぱい食べるだろうし。そんな長い間持ち運ぶわけじゃないよ?」
「いくらボクでもこんなに食べきれません。」
ああ怒ってる怒ってる、しかも王子様気付いてないし…まぁ気をつかったつもりだったのはわかるけどさ。たしかにキノならこのくらい1日でたいらげられるし。いつも携帯食料で我慢してるから甘いものあまり食べれないし
あ、王子様は焦って謝ってる。ようやく気付いたみたい
キノはキノでなに謝ってるんですか?まだ買ってないんだからいいじゃないですかとか言って知らんぷりしてるし
こんなに師匠以外の人間と仲いいのこの人くらいなのに、距離がかすかにあるのは、仕方のないことだけど、なんか……まどろっこしい上……
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「したたく水に濁りありってやつだよ」
「開口一番わけわからんぞ“親しき仲に礼儀あり”じゃないのか?とうとう本物のポンコツになったか」
「そうそれ!やるじゃんエロ犬。いやほらキノならともかく王子様はキノに礼儀正しく喋りすぎ思うんだよね」
「シズ様は女性に優しいというだけだ。キノ様ならなおさらだぞ」
「えー男女差別ー。でもさぁどうせなら『やぁキノ!今日もすごいキュートだね!!さっそく俺とお茶でもしに行かないかい?もちろん二人っきりサ!!』みたいに言ってもいいと思うよ」
「お前はシズ様をなんだと思ってるんだ」
だってさ、キノはキノさんと呼ばれるたびに嬉しそうだけどなんだか少し眉を寄せているんだ、それはきっと、普通に名前呼んでほしいんじゃないかなぁ
僕の想像だけどさ
―あとがき―
タイトル全然関係ないですよねハイ