Novel
□きっかけの国
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それからキノはオルゴールの店に入ると店員に高そうな商品をいくつも紹介されたが
「申し訳ないのですが、買う気はありませんので」
そう言い小さな箱のオルゴールを手にとり蓋を開けてみた
「……!」
とても綺麗な、繊細で優しく包み込んでくれるような音色
今までに聞いたことない、キノにとってはそんな音色で少し気に入ったようだった
そして他のオルゴールにも興味を湧いて箱を開いてみるが
「……?」
どれを聴いても、最初に聴いたもの以外はありきたりなつまらない曲だったので店主に最初の箱を見せたら
「おやあ!!旅人さんはお目が高い!そのオルゴールは本当はそんなちんけな見た目にするもんじゃない程の作品なんです!!」
じゃあどうしてかとキノは聞くと
「それがねぇ……作った本人の要望だったんだよ…その人は少し変わっていてね、普通に売ってほしいと聞かなかった」
でも、と店主は
「その代わり毎日国中を夜になったらその曲で包み込んでくれるようにと時間になると国中のスピーカーからこの曲を流すようにしたんだ旅人さんも聴いただろ?」
「いえ、ボクは夕方にはもう寝ていたので」
「坊っちゃんだねぇ。今夜は夜更かししたほうが得だよ」
「(坊っちゃん……)」
そう内心呟いたキノはシズに男と間違われた時のことを思い出した
小さなカフェのテラスでキノは一人考えこんでいた
『そりゃあ……キノがシズさんを好いているからだよ』
「……ボクが?シズさんを?」
確かに嫌いではない、でも好いていることも信じられない
何せ船の国では名前を忘れたフリさえしたほど避けていたのだ
「なんでそんなフリしたかってのは、自分でもわからないけど」
『好いている……?旅人しては微妙だと思うけどあの人……』
『そっちじゃなくて「一人の女の子」としてだよキノ』
しまった。とまたキノは忘れかけていたその言葉を思い出し顔を朱色に染めた
「(……絶対それはない)」
『女の子としてだよキノ』
「(どんな根拠で言い出したんだエルメスは…)」
『女の子としてだよキノ』
「(ボクは女らしい一面をだしたつもりはないのに……)」
『女の子としてだよキノ』
「(エルメスからしたらそうだった…?でも……違う…)」
「キノさん?」
「だから!女らしくなんか……!」
と顔を上げてキノはつい話し掛けられた相手に少し荒く言ってしまっていた
その人物は悩みの張本人だった
「「え?」」
二人は同時に声をだした